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その242 告白 2番目

「そっか……吉行にもとうとう彼女が」


健太は、その事実に対して、ただ驚くのみであった。

朝の出来事は、健太の心を揺れ動かすのに十分な物であった。

健太だけではない。

他の人も同様だった。

ちなみに、そんな中で大貴だけは何故か黙っていたりする。

美奈でさえ少しばかり動揺を見せていると言うのに。


「どうして大貴も……まさか大貴も」


そして、ある一つの結論に思い至る。


「……二ノ宮さんに、告白したのか」


導き出した、とある一つの答え。

それは、大貴が夏美に告白したということ。

それ以外で、吉行があんな発言をしたにも関わらず黙っていられる。

落ち着いていられる理由などない。


「大貴にまで彼女が……吉行の場合は、恐らく美空さんの方からの告白かな」


吉行自体、そこまで美空のことを想っていたわけではないだろう。

ただ、美空に告白されたことで、美空を見る目が変わったのかもしれない。

その証拠に、本日そのことを自慢するに至っている。


「……ウジウジしてると、この波に乗って、他の人も告白するかもしれない」


健太が感じる一つの不安。

それは。


「……かなえさんがすでに告白されていたら、どうしよう」


新たに感じる羽目になった、もう一つの不安。

前の不安―――断られた時の関係の崩壊に関する不安はもうなくなった。

そして今、新たなる不安―――すでに告白されていたらどうしようという不安が増えた。


「……考えても時間の無駄だ」



(スクッ)



健太は、座っていた地面から腰を浮かす。

ここは屋上。

そして時刻は昼休み。

この場所が立入禁止になっていない為か、屋上に来る人数と言うのは少ない。

だから健太は、ほとんどをこの屋上か。

誰かと話す為に教室で過ごす。

たまに、生徒会室で過ごすこともあるが。


「それにしても……寒い」


だが、晴れていても寒いものは寒い。

何故なら今の季節が冬であるからだ。

時間帯的には一番暖かくなる時間のはずなのに、体感気温は13℃弱。

すなわち、この屋上は、かなり寒い場所にあると言える。


「……早い所教室に戻ることにしよう」


健太にその決意をさせるのに、そう時間はかからなかった。

そうして、健太は自分の教室に戻ろうとした。

その時だった。



(ガチャッ)



「!?」


屋上に通じる扉が開かれる。

そして入って来る、見知らぬ男子生徒と女子生徒。


「ま、まずい……どこかに隠れないと」


出れないと判断した健太は、とりあえず反対側に隠れることにする。

素早い行動だった為、すぐに対処することが出来た。


「……こんな時に、二人でどうしたんだろう?」


背格好から考えて、男子生徒の方は一つ上の先輩だろう、と健太は判断した。

もう一人は、名前こそ知らないが、自分と同じ高校一年生だろうと判断した。


「まさか……告白?」


その言葉を口にしたまさにその瞬間のことだった。


「先輩!もしよければ……私と、その……付き合ってください!!」


まさにベタな告白であった。

屋上。

先輩と後輩。

昼休み。

この三つの条件が揃う告白と言う物は、


「……済まない」


叶う確率が低いものでもあった。


「え……」

「僕は君を、そう言う風に見ることはできない……何故なら、僕にはもう、すでに想い人がいるから」

「あ……あ……」

「……あれ?あの人もしかして……」


健太は、たった今女子生徒からの告白を断った男子生徒のことを知っていた。


「吉田先輩じゃないか」


そう。

今目の前で告白を拒否した男子生徒……。

彼は、生徒会人事担当の、明久であった。


「吉田先輩の想い人ってことは……三倉先輩のことか」


健太はそう予測した。


「じゃあな……本当に、済まない」


最後に明久は、女子生徒にそう言葉を残し、その場を去って行った。
















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