その241 告白 1番目
月は、一番寒い時期となる2月。
雪などは降ってはいないが、空気が乾燥していて、なおかつ寒い。
「寒いな……この時期は俺、何となく嫌だな」
「どうして?」
「寒いから、俺の体が自由に動かねぇんだよ」
「それ、何て生物?」
呆れながらも、健太はきちんと吉行に対して突っ込みを入れる。
「ところでよ、健太」
「何さ?吉行」
何故か妙に嬉しそうな表情を浮かべる吉行。
健太は、そんな吉行の表情の意味が分からず、疑問の表情を浮かべる。
それがたまらないのか、吉行は更に嬉しそうな表情を浮かべる。
人は、彼の表情を見て、満面の笑みと言う表現をすることだろう。
「一体どうしたのさ吉行?何が何だかよく分からないって」
「分からないか?なら教えてやる……」
吉行はそこで、勿体ぶるかのように言葉を溜める。
「何よ。早く話しなさいよ。どうせ画面の向こうの彼女が出来たとかなんでしょ?」
「何でいつの間にかそんなキャラになってんの、俺!?……まぁ、今回はその発言も許してやる」
「上から目線になるな」
ミサの言葉にすらあまり動揺しない吉行。
一同は思った。
「(本当にこいつ、どうしてしまったのだろうか?)」
誰もが、そう思った。
そして、そんな疑問を晴らすかのように、吉行は言った。
「何とな!ついに俺に彼女が出来たんだぜ!!」
「あ~はいはい。二次元の話はもういいから」
「だから二次元の話じゃねぇよ!!」
二度目の言葉に、さすがの吉行も突っ込まずにはいられなかった。
「リアル彼女だよ!」
「リアル彼女っていう表現もどうかと思うけどね」
美奈がそこに突っ込みを入れる。
「え?突っ込む所そこ?」
「ええ」
「肝心なのは、コイツに彼女が出来たか出来てないかにあるでしょ?」
ミサが吉行のことを指さしながら、そう言う。
「コイツって何だよ……なら、論より証拠ってな。証拠を見せてやる……って、本人いないし!?」
「何?このクラスの人なの?」
マコが吉行に尋ねる。
「おうよ!俺の彼女はな、このクラスにいる!」
「いや、そう高々に宣言されても困るわけなんだけどさ」
呆れながら、健太がそう呟く。
「もう少しで来るはずだ……俺の彼女が!!」
そう吉行が予測をしたその時だった。
(ガラッ)
「来た!?」
タイミングよく教室の扉が開かれる。
そして、そこから現れて来たのは。
「……ん?どうしたんだお前ら?何故俺のことを固まりながらに見るんだ?」
「……ふ~ん、アンタ、そんな趣味してたのね」
「違うわ!!俺はノーマルだ!!」
「な、何の話だ?」
入って来たのは、片手に出席簿を持った外川だった。
どうやら外川が入ってきたことで、一同は勘違い(?)を起こしているようだ。
「ちょ……待てお前ら。何か勘違いしてないか?」
「いいえ、別に……ウフフ」
「何だよ最後の笑いは!?何か怖ぇよ!!」
本当の恐怖とは、きっとこのようなことを指すのだろう。
吉行はこの歳ながら、そのことを悟るのだった。
「さて、今日の連絡だが……」
と、外川が何食わぬ顔でHRを始めようとしたその時だった。
(タッタッタッ)
誰かが急いでやって来る足音がする。
「この教室に向かって来てるね」
マコがそう呟く。
「今空いてる席は、アメリカに行っちゃった夕夏さんと、欠席かもしれない大貴と美空さんの二人か」
「そうすると、コイツの彼女って……」
誰もが考えた。
いや、それはないだろう、と。
(カラッ)
慌てて入って来たのは。
「す、すみません!遅れてしまいました……」
「ああ、まだ間に合ってるぞ。出欠はまだ取ってないからな」
「あ、ありがとうございます!」
慌てて自分の席に座るその人物。
「美空!」
そう。
その人物とは、美空のことだった。
「……マジで?」
「「「「「マジで!!!!????」」」」」
「?……?」
声を揃えて驚く一同に対して、何が何だかよく分からない様子の美空であった。
いよいよ最終章に入ってまいりました。
この『告白』編と、最終話『(タイトル未定)』を含めた残り9話……すなわち、合計250話で、本編が終了いたします。
その間に、番外編を更に二つ程入れまして、後11回の更新となります。
残りあとわずかですが、どうか最後までよろしくお願いします。