番外編その21 それぞれの結末 3番目
「なるほどな……そんなことがあったのか」
「……」
夏美から聞いた話は、大貴にとっても予測のつかなかったことであった。
話を聞いたからと言って、大貴に何かが出来るわけではない。
もう起こってしまった、いくら後悔しても遅い話なのである。
「あのよ……二ノ宮」
大貴は、そんな夏美に対して何かを言おうとする。
しかし。
「いいんです。これで心がスッキリしましたから」
「二ノ宮?」
まるで重荷が肩から落ちたような表情を浮かべる夏美。
大貴は、そんな夏美の表情の示す意味を読み取ることが出来ないでいた。
「まぁ、木村には好きな人がいたってことか……」
「そうみたいです。そして、その人は私ではない……」
確かにそうだ、と大貴は思った。
自分には好きな人がいるが、この想いを伝えるのが怖い。
なんて悩みを話すのに、どうしてその張本人に伝えることが出来ようか。
否、出来るわけがなかった。
つまり、今回健太がとった行動は。
無意識のうちに、夏美をフッたのと同じ行動となる。
これは、愛の時も同様のものであった。
「つまり木村は、ここまで二人の女子をフッたってことになるのか」
愛の件も聞いていた大貴は、無意識の内にそう呟いていた。
「?何か言いましたか?」
「いや、別に」
夏美にはあまり聞かれたくないことだったので、大貴はそうはぐらかした。
「それで……いいのか?」
「え?」
「お前の気持ちを、伝えたわけじゃないんだろ?」
大貴は、夏美の話を聞いて、そう言った。
夏美は、
「……いいんです」
短く、はっきりとそう言った。
「どうして?お前は自分の気持ちを伝えたわけじゃないのに、そのままでいいのか?」
「伝えたところで、結果は見えていますし……次の日からの関係が崩れるだけです」
「お前は木村に、伝えた方がいいってアドバイスしたんだろ?なら、アドバイスした人がそれを実践
しないでどうするんだよ」
「伝えたところで、結果は一緒です……始めから分かっている結末を味わうのは、辛いことですから」
夏美は、自分の胸の内を話す。
「……そうかよ。けど、それってよ、結局は目の前の現実から目を逸らしてるだけだろ」
大貴は、自分の好きな夏美だからこそ。
そうやって、わざと突き放すように言った。
「え?」
「自分で勝手に結論出して……それが現実になるのが怖い?そんなの、さっきお前が言ってたことと
明らかに矛盾してるじゃねぇか」
「分かってます、そんなこと……でも」
「でもじゃねぇだろ!」
「!!」
突然、大貴は叫びだした。
「自分の気持ちは、はっきり伝えるべきじゃねぇのかよ!やらないで後悔するより、やって後悔した
方が、絶対いいに決まってるだろ!!」
「……じゃあ、渡辺君でしたら、駄目だと分かっていても、するんですか?」
「ああ、もちろんだ!!」
大貴も、目の前の少女の想いが別の人に傾いていることを知っていた。
だから、そういいきれるのだ。
「……そうですか。なら……」
「だからここで俺は言う」
「え?」
そう前置きを置く。
何のことか分かっていない夏美を無視するように、大貴は、自分のその想いを告げた。
「俺は……二ノ宮、お前のことが好きだ!!」