その238 決意 2番目
昼休みの話。
「……」
雨が降っている為、今日は屋上には上がれない。
なので、図書室に入ることにした。
こんな日だと言うのに、図書室には人がほとんどいなかった。
内心、健太は安心した。
「……ここなら、一人で安心して考え事が出来る」
考え事をする為に、図書室に来たのだ。
本を読みに来たわけではなかった。
「……」
(ガタッ)
目立たないような席に座り、健太は考え込む。
健太は、机の上に手を置いて、寝るような態勢で伏せる。
「やはり、僕は想いを伝えるべきなんだろうか……?」
考えることは、前と変わらず。
自分は、この想いを『その人』に伝えるべきかどうかの話。
「でも、伝えた瞬間に、僕達の関係は崩れ去ってしまう」
それが、健太にとってのもっともな恐怖だった。
それが、健太が告白するに踏み切れない、唯一にして絶対の理由。
「それが嫌なんだ……もし失敗して、赤の他人同士になってしまうのが、たまらなく怖いんだ」
確かに、成功すれば二人はいつまでも幸せに暮らせることだろう。
しかし、失敗してしまえば、明日からはもう引き返すことのできない、気まずい関係となるだろう。
前者なら、健太にとっても相手にとっても、幸せな道である。
後者なら、健太にとっても相手にとっても、不幸な道である。
「僕は……どうしたら」
「何か、お悩みですか?」
その時。
健太の近くにやって来る、ひとつの影があった。
その人物は、
「……二ノ宮さん」
二ノ宮夏美、その人だった。
「こんにちは。図書室で会うのは初めてですね」
「ああ……いつもこの時間と言うと、屋上か教室にいるからね。今日は雨降ってるし、あまり教室に
いる気分じゃなかったから、こっちに来たんだよ」
「そうだったんですか」
健太は、正直にそう話した。
教室にいられるような心境じゃないのは、確かだったからだ。
「それで、何か悩みをお持ちなんですか?」
「……これは二ノ宮さんに伝えるべき悩みなのかな?」
健太は一瞬考えたが、やがて、
「うん、分かった。話すよ」
やがて話すことに決めた。
「……それは、どう言った悩みなんですか?」
「……恋、についての話なんだ」
「!?」
健太の言葉を聞いた夏美は、ふと驚きを見せた。
「そ、そんなに驚くことかな?」
「い、いえ!あまりにも突然の言葉でしたので、つい……続けてください」
夏美は、健太に続けるように言った。
その言葉を聞いて、健太は続けた。
「僕には……その、気になる人がいるんだ。その人に、僕の気持ちを伝えたいんだけど……もし失敗
したとして、今までの関係が崩れるのが怖いんだ」
「……」
口ぶりからして、健太の想い人は自分ではない。
そう結論を出した夏美は、健太の話を、多少心が重いながらも、最後まで聞いた。
そして、健太の言葉が終わった時に、夏美はこうアドバイスをした。
「……その想いは、きちんと伝えるべきだと思います」