その232 否定 3番目
……咳が、ゴホゴホって……。
あ、パソコン使えるようになりました……一応ですけどね。
まだ完全に治りきってないんですよね~。
……インフルエンザ、恐るべし。
「あ、あの人は……!!いつぞやのオリエンテーション旅行で登場した変態!!」
「てか、オタクだな」
「どっちも違うわ!!」
ミサと大貴の言葉に、大貴は半ばキレていた。
「あれ?キレてますか?」
「キレてないっすよ……って、何させんだよ吉行!!」
「いやぁ、なんというかさ、お前ってそういうキャラだから?」
「うるせえよ!!」
吉行がそんな風に言ってきたので、直樹はそれなりにキレた。
だがその内、自分の本来の目的を思い出したのか、
「おい、木村健太!!」
「何なのさ、直樹……」
健太のことを呼ぶ直樹。
健太は、呆れながらにその呼び掛けに答えた。
すると。
「気安く俺のことを名前で呼ぶんじゃねえ!!財前様と呼べ!!」
健太に下の名前で呼ばれるのが好ましくなかったのか、直樹が怒り出す。
それを黙って見てなかったのは、
「あなた……この学校の生徒でもないというのに、一体何の用なのですの?」
夕夏だった。
「何だよ。お前には関係のない話だろ。俺は木村健太と話があるんだ。とっととそこをどけ」
直樹の進路を塞ぐように立つ夕夏に対して、直樹は半ば脅すように言う。
ただ、眼鏡をかけて、ハッピを羽織り、『愛ちゃんラブ』と書かれたハチマキを頭に巻いたその状態で言われた所で、別段迫力があるわけではなかった。
「どくわけありませんわ。余所者の意見を聞く程、私、甘くなくってよ」
「この野郎……イチイチ人を嫌な気分にさせるような言い回しだな!どこかのお嬢様気取りかっての!!」
「ていうか、この人本当にお嬢様だぞ?」
「なん……だと」
吉行からそう言葉を返されて、直樹は驚きを隠せなかったらしい。
背景に雷が見えたような気がした。
「……って、そんな事実は関係ねぇっての!!お嬢様だから何だ!!所詮女は女!!とっととそこから
どけ!!」
「どかないわよ」
「どかねぇなら力づくで……!!」
(パシッ)
「……あぐっ!」
夕夏は、直樹の突進攻撃を、体を横にずらすことでかわし、そのまま右足を直樹の方に突きだす。
見事にその足に引っかかり、直樹の体は前に倒れてしまった。
「テメェ……やりやがったな!!」
「うざいから、黙っててくれないかしら?」
「ぐはっ!」
「あ~今のさりげない一言、結構傷つくな~」
経験したことがあるらしい吉行は、傷ついてその場で蹲っている直樹を見て、呟いた。
「って、そんな言葉一つで落ち込んでる場合じゃねえ!!」
「立ち直った」
あまりの立ち直りの早さに、その場にいた誰もが驚いた……ような気がした。
「木村健太!!今は時間がなくなってしまったから、13時、屋上にて待つ!!一分でも遅れて来るん
じゃねえぞ!!」
「わ、分かったよ……何の用か知らないけど」
(ダッ!)
それだけを伝えると、吉行はその場を去ってしまった。
「……何だったの?あの人」
「……」
マコの呟きに対して、答える人は誰もいなかった。