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その229 急変 7番目

「今までこんな気持ちになることはなかった……だから、僕は今、どうしたらいいか分からない」

「健太……」


愛は、目の前にいる少年が、自分と同じ悩みを抱えていたことに気づく。

ただし、両者の違いは……想い人の違い。

愛に至っては、その想い人が別の人のことを想っているという残酷な結末。

なので、今の愛に出来ることは、ただ一つ。


「……私も、そう言った想いを抱えたことがある」

「え?……愛?」

「けど、私の場合はつい最近に終わったんだけどね」


嘘をついていた。

『つい最近』ではなく、『今さっき』の話であるのもそうであるし。

愛がその想いを抱えているのも、また事実であった。


「だから……私が言えることは一つだけ」


それは、愛が出来なかったことでもある。

……いや、今言えば気が変わってくれるのではないか?

そんな疑問もまた、愛の中には浮かんでくる。

しかし、そんな希望も消え去っていた。

先に告白した静香がそうであったように、愛がもしこの場で告白したとしても、失敗するのみ。

やるだけ無駄……。

そう言ったことであった。


「その想いは……早めに伝えた方がいいと思うよ。その人が、別の想い人を見つけてしまう前に」

「別の、想い人?」

「……そうなってしまったら、苦しいから。もう、その恋は、叶わなくなるから……」


自分のことのように、愛は言う。

いや、それは紛れもなく自分のことであった。

告白してから言われるのであればともかく、告白する前に発覚した事実。

それを、愛は認めたくはなかった。

しかし、事実である以上、それはもう揺るぎようのないことなのだ。

どう足掻こうが、この真実だけは変えようのない。


「……愛は、そうなってしまったの?」


当の本人である、健太は尋ねる。

愛は、その質問に、無言で首を縦に動かした。


「……そっか」


健太は一言、それだけを漏らす。

その言葉を聞いてしまった愛は、


「……私の恋は、これでおしまい……ってわけにもいかないんだけどね」

「え?」

「……だって、その人はまだ、その想い人に告白してない。だから、その恋も成就してない……だから

 私は、その人が自分のことを見てくれるように、精一杯アピールするつもり」


目の前にいる、『自分の想い人』に向かって、そう告げる。

もちろん、健太自身は、まさか自分が愛の想い人だなんて知るはずもない。


「……頑張ってね、愛」


健太は一言、それだけを告げる。


「……うん」


『その人』からの応援を受けて、愛は頷く。

しかし、それは限りなく無理な挑戦でもあるだろう。

しかし、愛はそれでも諦めないだろう。

しかし、それでも健太は愛のことは友達としてしか見ないだろう。

しかし、愛はそれでも諦めるわけにはいかなかった。


「……いつか、絶対に振り向かせて見せる。その人が告白する前に……」


だが、同時にこうも思っていた。

その人が、その人の想い人に告白して、成功したとしたら。

自分の心も、きっと晴れるだろうって。















そんな、様々な急変を迎えた、とある一日の話であった。
















『急変』編はこれで終わりです。

次回は、今までのサブキャラ紹介の部屋その2でもやってみたいと思います。

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