その224 急変 2番目
(バン!)
勢いよく、病室の扉が開かれる。
そこから現れて来たのは、
「……健太」
先ほど連絡を受けて、慌ててやって来た健太だった。
「あ、愛!?」
まさか病室に愛がいるとは思ってなかったので、健太は驚きの顔を見せる。
と、同時に気づいた。
「あ、そう言えば愛って、静香さんと同じ学校に通ってるんだっけ」
「そうだよ……」
「それより……病状は?」
健太が尋ねる。
心臓音を計る機械を見る限りでは、別に異常が見られるわけでもなかった。
「さっきまで生死をさまよっていたのですが……今はもう大丈夫です」
「あ、静香さんのお母さん……連絡してくださって、ありがとうございました」
どうやら事は、健太が病室に入って来る前に終わっていたようだ。
「けど、さっきお医者様が言ってたけど、後は順調に回復するのを待つだけみたいよ」
「……そっか。良かった……」
心底安心したような顔をして、健太は呟いた。
「……それじゃあ、私は静香が起きた時の為に、何か飲み物とかでも買ってきますね」
「あ、はい」
「目が覚めたら、私が伝えますから」
「そうしてくれるとありがたいです……それでは」
(タン)
静香の母親は、飲み物を買いに下のロビーまで向かって行った。
この病院には、自動販売機とか売り場というのが、一階のロビーにしかないからだ。
「「……」」
二人の間に、静寂の時間が流れる。
正確には静香も含めて三人なのだが、未だ眠ったままなので、カウントしないことにする。
この静寂の時間を最初に打ち破ったのは、
「……ねぇ、健太」
愛だった。
「何?愛」
「この時にこんな質問するのもどうかと思うけど……静香とはどうやって出会ったの?」
「……そう言えば言ってなかったっけ」
健太は、そう呟いてから、静香とのいきさつを話す。
聞き終えた愛は、
「そっか……そう言った経路が」
「……うん」
静香の顔を見ながら、愛は呟くように言った。
健太は、その愛の言葉に一応反応した。
「……ぐっすり眠ってるね」
「……そうだね」
なかなか起きない静香を見て、愛と健太は共に呟く。
薬が効いているのか、静香は未だに起きる気配がなかった。
「ところで……愛」
「何?」
静香が寝ていることを確認すると、健太は愛に、気になっていたことを尋ねた。
「静香さんの病気って……何なの?」
前に静香本人にも聞いたことのある質問だったが、他の人にも聞いておきたいと、健太は考えた。
なので、このような質問をしたのだ。
「……ガンみたいだよ。けど、もうそろそろ治るみたいだけど。ガン自体は」
「……どういうこと?」
愛の言っていることの意味がイマイチ分からなかった健太は、尋ねる。
「元々静香は体が弱くて……それで、ガンだけじゃなくて、肺炎も患ってるの」
「……」
健太は、黙り込んでしまった。
まさか、そこまで重大なことになっているとは思ってなかったからだ。
「……う」
「……ん?」
その時。
ベッドの方から声が聞こえる。
その声を、二人が聞き逃すはずがなかった。
「わ、私伝えてくるね!!」
(バンッ!)
慌てて愛は病室から飛び出る。
それと同時に。
「う……私は、何を」
静香が目覚めた。