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その221 居場所 6番目

「正解なんて、ない?」


健太は、吉行の言葉がイマイチ理解出来なかったらしく、もう一度聞き返す。

吉行は、そんな健太に、言った。


「ああ、どっちが正しいかなんて答えはないと思うんだ」

「そ、それはどうして?」

「それはだな……」


吉行は、そこで言葉をためる。

そして、言った。


「そんなの、誰にも出せないからに決まってるだろ」

「誰にも、出せない?」

「この場合だと、極端な話、『木村家』か『月宮家』かを選ぶってことになるんだろ?」

「そうだけど……」


健太は頷いた。


「なら、話は簡単だ。美咲ちゃんが行きたい道を行けばいい。それが正しい答えになるし、

 美咲ちゃんにとっても、周りの人にとっても幸せな、そして納得がいく答えだからな」

「納得がいく、答え……」


その言葉を聞いた時、健太は思った。

自分の出していた答えは、果たして納得のいく答えだったのか?

そして、美咲にとって、幸せな答えなのか?

この答えは、未だ誰にも話してはいないが、健太の心の中で間違いだということに気づいた。


「だから、俺は思う……その答えは、美咲ちゃんに出させて正解だってな」

「吉行……」


正直、健太が吉行の言葉で感銘を受けたのは、これが初めてであった。

なので、改めて健太は思った。

吉行と、友達になってよかった、と。


「俺に言えることはそれだけだ。後は、お前と美咲ちゃんの問題だからな」

「……ありがと、吉行」

「礼を言われるようなことを言ったつもりはねぇよ、ただ」

「ただ?」


吉行は、そこて一旦言葉を区切る。

そして、言った。


「幸せになる道を選んでくれたら、俺はありがたいけどな」

「……そうだね」


その言葉を最後に、健太と吉行は、その話をすることをやめた。















そして、その夜の話。


「……答えが、決まったんだね?」

「……うん」


健太が家に帰って来ると、居間で一人、座っている影が見えた。

言うまでもなく、美咲のことである。

美咲は、何かを決意した表情で、健太を迎え入れた。

この顔を見た健太は、答えを、居場所を選んだんだと感じた。


「それで……どこを選んだの?」


健太は一言、そう尋ねる。

すると、美咲は口を開いた。


「私は……」

「……」















「私は、『ここ』を選ぶよ」















「……そっか」


美咲の出した答え。

それは、『木村美咲』として生きていく道であった。

つまりは、これまでと何も変わらない生活を送ることであった。


「確かに、お父さんに会えたのは嬉しい……けど、それ以上に、今の生活が楽しいの。だから

 私は、この家に……」

「……」


健太は、黙って美咲の話を聞く。

そして、言った。


「うん。美咲はその答えを選んだんだね?なら、僕は何も言わないよ」

「おにい……ちゃん?」


美咲の出した答えなら、どんな答えでも受け入れるつもりであった健太にとって、美咲の出した答えは、とても嬉しい物であった。


「でも、一つだけ確認させて」

「何?お兄ちゃん」


美咲の覚悟を聞いてもなお、健太は尋ねた。


「後悔は……しないね?」


その問に対して、美咲は、


「……うん!」


力強く頷いて見せた。
















次回で『居場所』編は終了致します。

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