その20 夜の戦い 2番目
お風呂タイム!!
入浴シーンって、旅行では必須だよね♪
……すみません、誰かが乗り移ってきました。
しばらくして、風呂の時間となる。
先程、5分で来ると言った吉行は、まだ戻って来てはいない。
まだ5分は経っていないのだが。
「さすがに5分で帰ってくるのは、無理だよね」
そう呟いたその時だった。
(バン!)
突如、ドアが開かれて、
「おまたせっ!」
吉行が現れた。
時間にして、ジャスト5分。
「す、凄い……本当に5分できた……」
「じゃあ風呂に行くぞー!」
「おー!!」
「よっしゃー!!!!」
「……なんだか、やけに気合入っているね」
風呂の時間になると聞いて、なぜか盛り上がりを見せる吉行たち(健太は除く)。
気合が入っているのはこちらの4人だけではないわけなのだが。
「……なんか、混みそうだから、後で入るね」
健太はとりあえず、1人部屋に残こることにした。
そして、この判断は正しかったのである。
一方、女子側にも何か考えがあるみたいで、
「美奈、本当にこれを持ってきた意味ってあるの?」
「うん。これがこの学校に伝わる伝統らしいよ。この前、先輩っぽい人から聞いた」
「ぽい人って……」
美奈の情報網は、入学してわずかなのに、かなりの広さを誇っているみたいだ。
もう先輩からいろんな話を聞き出していたらしい。
同じ頃、愛のいる部屋でも、
「こんなの持ってきて意味あるの〜?」
「当たり前じゃない!!」
とクラスメートに言われている愛。
愛の手にも、ある物の姿があった。
それが何なのかは後のお楽しみ。
「あ、でも今は混んじゃいそうだから、私は後で入るね」
と、愛も健太同様に、部屋の中で待つことにした。
同じ頃、かなえは廊下を歩いていた。
すると、ある事に気づく。
「あっ、いけない。部屋に着替えを忘れちゃった」
「あら。そう」
どうやら着替えをかばんの中に入れっぱなしらしい。
「私、一旦部屋に戻って、美奈たちが帰ってきてから入るね」
「分かった。ラジャー」
2回も肯定を示す言葉を使う意味が分からないが、とりあえず分かったようだ。
そして吉行たちは風呂に入る。
「あれ?渡辺。お前も狙いに来たのか?」
「いや別に俺は……」
「はっはっはー!恥ずかしがるこたぁねぇって!!」
「は、はぁ……」
大貴は吉行の様子に多少呆れる。
しかしこの2人の仲は、結構いいらしい。
「なぁ吉行。本当にいいのかな?」
「ああいいぜ。この手のことはオレに任せな」
「おお〜」
周りにいる男子からの感嘆の声が聞こえてくる。
「この日の為に先輩からアドバイスをもらったぜ!!」
「おお〜!!」
感嘆の声はさらに大きくなる。
「じゃあ行くぞ!!」
「よっしゃー!!」
(ガラッ)
勢いよく風呂場の扉を開けたところ、
「な、なんだよこれ……」
軽く300人は入れるような風呂がそこにはあった。
それだけあって、洗い場の数も並じゃない。
「ここの宿って、風呂に金使いすぎだろ……」
「どこぞのホテルにある金の風呂並に金かけてるよな、これ」
「ああ、そうだな……」
中にいる男子達は、皆同様に驚いている。
しかし、その中には健太の姿はもちろん、何故か直樹の姿までなかった。
ここで、吉行があることに気づく。
「だが待てよ……これだけこっちが広いということは……」
その後の言葉を続けるように、ある男子生徒が言う。
「向こうも多勢じゃん!!」
「よっしゃー!!」
さらに声は大きくなっていく。
「よ〜し、確かこことここと……」
吉行は、どんどん竹の柵の弱い部分を探していく。
どうやらこの風呂の柵は、竹のようだ。
「よし、順番に見てこう」
「おおー!!」
吉行たちは、順番にという言葉を完全無視したように群がっている。
「……アホか」
1人大貴は湯船に静かに浸かっている。
「……まぁ、ちょっとやりたくないよね、あれは」
大貴に話しかける男子生徒。
「落ち着けっての!!」
誰かの叫び声が聞こえてきたその時だった。