その211 少女が抱く過去の話 6番目
「うわぁ……」
中に入ってみると、日曜日ということもあり人が結構いた。
見ると、家族連れの他にも、友達同士・恋人同士、中には一人で来てる人なんかもいた。
みんなおいしそうに、目の前に出されているハンバーグに夢中になっているように、かなえ
には見えた。
「ねぇねぇ、早く注文しようよ!」
「まぁ待ちなさい。店員が来て、席を案内してもらってからだ」
父親がかなえにそう語りかけると同時に。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
店員がレジの奥から現れて来た。
「三名です」
かなえの母親が、右手の指を三本立てて、店員に見せながら言った。
「三名様ですね?かしこまりました。おタバコの方は?」
「ああ、吸わない。子供がいるから」
今度は父親が答えた。
「かしこまりました。では、禁煙席の方をご案内します」
店員はそう言うと、三人についてくるようにという合図を送る。
かなえ達は、そんな店員の後ろをついていき、自分達の席へと向かう。
と、その途中。
「……」
ふと、かなえが横の席を見る。
すると。
(ギン!)
「!!」
ゾクッと、寒気を感じた。
その人物は、何故かかなえ達―――正確に言うと、かなえの父親と母親をじっと睨みつけていた。
「どうしたの?かなえ」
そんなかなえのことを見て、母親は歩きながら尋ねる。
「な、なんでもないよ……」
かなえは、笑顔を作り、母親にそう言った。
母親の頭の中には、恐らく『?』の文字が飛び交っている所だろう。
ともかく、席に案内されて、ようやっとメニューを見ることとなる。
「えっと、何にしようかしら……」
「私、これ!」
かなえがメニューにある、とある物を指さしながら言った。
それは。
「何々……『チーズたっぷりハンバーグ』ね。なら、私もそれにしようかしら?」
「じゃあ俺は……『ステーキ&ハンバーグ』にしよう」
全員の注文が確定した所で、店員を呼びだす。
そんなに時間が経たない内に、店員はやって来た。
父親は、全員分のメニューを告げた後に、
「以上で」
と、注文を完了させた。
「かしこまりました。しばらくお待ちください」
そう言うと、店員は奥の方へと戻っていった。
「これで大丈夫だな」
後は、商品が届くのを待つのみ。
そう時間が経たない内に届くだろう。
「ワクワク、ワクワク……」
見て分かる通りに、かなえは自分の前に注文した品が届くのを楽しみに待っている。
数分後に、三人分の食事が前に出された。
「では、ごゆっくり」
かなえ達の前に食事を置いた店員は、そのままもう一度奥に戻って行った。