その210 少女が抱く過去の話 5番目
とある日曜日。
かなえが友達の家に遊びに行き、家に帰って来た時の話。
「ただいまー!」
元気よく扉を開ける。
「お帰り!かなえ」
笑顔で迎え入れる、かなえの母親。
ソファには、新聞を読んでいる父親の姿もあった。
「お腹空いた〜今日の夕ごはんは何?」
「今日はかなえが帰って来てから、みんなでどこかに食べに行こうとしてた所よ」
どうやら本日の夕食は、家族で外出してでのことらしい。
「外で食べるの?」
「そうよ。久し振りにね」
「わーい!」
子供と言うのは、外食等の言葉に弱い。
いつも食べている母親の料理もいいのだが、たまにこういうのが挟まると、なおいいのだ。
「今日は何を食べるの?」
「そうね……ハンバーグかしら?」
母親がそう言うと、かなえは心底嬉しそうな顔をする。
そんな様子を見て、母親と父親も、笑顔になった。
「それじゃあ早く支度をして。結構すぐに出るわよ」
「は〜い!」
かなえは気持ち駆け足で自分の部屋へ戻り、準備をする。
それから居間に出てくるまで、そこまで時間がかからなかった。
「準備出来た?」
「うん!」
「それじゃあ、行くよ」
父親の言葉で、かなえ達は出発することにした。
だが、この選択が、あんなことを呼びこんだのかもしれない……。
デパートについたかなえ達は、早速ハンバーグ屋に行く。
かなえは、食べる前からもうウキウキが止まらないようだ。
「そんなに嬉しいの?かなえ」
「うん!」
母親がそう尋ねると、かなえは笑顔で答えた。
「まぁ、外出なんて最近あまりしてなかったからな。かなえにとっても嬉しいことなんだろう」
「そうね……私達も、朝は仕事があったわけだし」
そう。
日曜日なのに家族と共に過ごさずに、かなえが友達の家に行っていたのにはわけがある。
かなえの母親と父親は、とある科学所で研究員を務めている。
なので、基本あまり休みがないのだ。
本日は、午前中までに一つの実験が終わった為、こうして出かけることが出来たのだ。
「たまには休みでも貰って、かなえと一緒に過ごそうかしら?」
「それがいいと思うな。俺も休みたいしな」
「もうあなたったら……」
父親が冗談を言うと、母親は笑ってそう言葉を返す。
そうしている内に。
「ママ!ついたよ!」
「あら、本当」
いつの間にか、目的の店の前までやって来ていた。
「じゃあ早速中に入りましょ」
「賛成!!」
かなえは手をあげるようにして答える。
そして、三人はハンバーグ屋へと入って行った。