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その206 少女が抱く過去の話 1番目

このお話は、ある一人の少女の過去の話である。

ある少女の名前は―――相沢かなえ。

今まで彼女の過去は明らかにされてはいなかったが。

今回、その過去が明らかになるだろう。

だからこそ、最後まできちんと読んで頂きたい……。















数年前。

かなえがまだ小学生の頃のお話。


「……うわぁ」


当時、まだ8歳という年のかなえは、両親と一緒にとある遊園地に来ていた。

仕事で忙しい両親だったのだが、この日だけはどうにか休みがとれたのだ。


「大きい遊園地だね、お母さん」

「そうね。今日は好きなだけ遊んでいいのよ」

「わ〜い!!」


母親がそう言うと、かなえはかなり喜んだ。


「こらこら。そんなに急がなくても、遊園地は逃げたりしないぞ」


走って中に入ろうとするかなえに対して、父親がやんわりと注意をする。


「大丈夫だよ!転んだりしないから……」


首を後ろに向けて、両親にそう言おうとしたその時だった。



(ドンッ!)



「うわっ!」

「キャッ!」


言ってるそばから、かなえは誰かと衝突し、その場に倒れこんでしまった。

慌てて両親はその場へと向かう。

かなえも、少し痛みを感じていたが、謝る為にその少年のことを見る。


「……あ」


顔を見て、固まってしまった。

その人物は、短くて黒い髪、黒くてパッチリとした瞳。

背はかなえよりも少し高めであり、どこか優しげな雰囲気がある少年だった。


「ご、ごめんなさい!」


かなえは慌ててその人物に向かって謝った。

すると。


「ううん、別に大丈夫だよ。君こそ、どこか痛む所とかない?」

「え?と、特にないですけど……」

「そっか。それなら良かった……怪我なんてしたら、大変だもの」


かなえの思った通り、その少年は優しかった。

自分のことよりもまず、他人のことを心配するような、そんな少年だった。

かなえは、この少年のことを見た瞬間。



(ドクン)



「あ、あれ……?」


心臓が五月蝿く鳴り響く。

こんな経験は一度もしたことのなかったかなえは、この正体を掴むことが出来なかった。


「お〜い!何やってるんだ?置いてくぞ?」

「あ、ちょっと待ってよ、父さん!……それじゃあね!」

「あ……」


どうやら少年の父親が呼んでいたようで、少年は声のする方へ慌てて向かって行った。

なので、かなえの元から自然と立ち去る形となっていた。

かなえは引き留めようとしたのだが、無駄に終わってしまい、やり場のない右手は、宙を舞うばかりであった。


「……あらま、かなえにも、ついに春が来たのかしら?ねぇ、あなた」

「そうかもな、うん。青春っていいな!」

「な、何のこと?パパ、ママ?」


二人の言っている意味が分からなかったかなえは、そう聞き返すしかなかった。
















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