その203 始業式 3番目
生徒会の話し合いが終わった健太は、一足早く家に戻る。
理由は特にないのだが、何となくそうした方がよさそうだと考えたからだ。
その帰り道で。
「「あっ」」
誰かとバッタリ出会った。
「愛!久し振りだね!」
「うん!健太も元気にしてた?」
「もちろん!愛は?」
「私も!」
相手は、愛だった。
愛は、健太とは通っている高校は違えど、中学校の時からの友人だ。
なので、たまに会ったりしたりもする。
「愛も学校の帰り?」
「ちょっと部活やってから帰ったから。健太は?」
「僕は生徒会の帰り」
「生徒会か……始業式の日から生徒会だなんて、忙しそうだね」
愛は、健太のことをいたわるように言った。
「そんなことないよ。結構楽しいしね」
「そうかもね。健太のいる所なら、どこでも楽しそうだよね♪」
「それ、どういう意味なの?」
分からない、と言ったような感じの顔で、健太は愛に尋ねる。
しかし、愛は何となくだよ、とだけしか言わなかった。
「ん?待てよ……ここに愛がいるってことは……」
「?どうしたの?」
「いや、僕の予想だと、後ろの方に……」
健太は、愛の背後を指さす。
釣られて、愛は後ろを振り向く。
すると、サッと隠れる影が一つ。
「……やっぱり。出てきなよ、直樹」
「何故バレた!?」
驚いたような表情で健太を見る直樹。
やはりいつもと同じように、ハッピを着て、ハチマキを巻いている状態で現れた。
彼は、『愛ちゃん愛好会』の会長であり、会員番号000。
引き継がれての会長、と言うより、彼が発足した団体なのである。
「いや、ものすごく気配を出してたからね……これで気づくなって方がおかしいよ。大体、
死角になってる愛はともかくとして、僕は愛と向かい合ってたんだから、もろに見えるしね」
「ちっ……さすがは木村。侮ってたぜ……」
「いや、こんなの僕じゃなくても推理出来るし。大体それ、ストーカーだから」
健太が、いろいろと突っ込みを入れていく。
それらを、直樹はあまり聞いていなくて、右から左に受け流しているような感じだった。
「おっと!これから俺達は集会の時間だった!愛ちゃんのことは心配だけど、集会の時間に
遅れてしまっては、会長として示しがつかない!だから、これにて一先ず退散する!」
(ダッ)
突然そのことを思い出したかと思うと、そのままどこかへ走り去ってしまった。
残された愛と健太の二人は、その様子をじっと眺めているしかなかった。
「……えっと、僕達もそろそろ帰ろっか?」
「そうだね……あっ、私帰り道こっちだから」
「そう?それじゃあここで」
愛と健太の帰る方向は反対。
よって、ここでお別れということになる。
「それじゃあまたね」
「ええ。また会いましょう」
そして、二人は家へと帰って行った。