その199 旅先でのクリスマス 11番目
「ああ……残念」
「いや、これでよかったんだ、これで」
もう少しで、背景に百合の花が見えるような光景……いや、今でも十分に見えてそうな勢い
だったのだが、そんな光景だけは避けることが出来て、一同はほっとしていた。
中には、吉行や和秀、美奈のように惜しがっている人もいたが。
「命令した新井さんでさえほっとするとは……」
事の重大さは、どうやら結構なものだったらしい。
「それじゃあ次、行くわよ」
「まだやるんかい!」
「当然でしょ」
和樹の突っ込みをさらりと流し、美奈は箸を引くように諭す。
しかたなく、一同は箸を引く。
そして。
「王様だ〜れだ!?」
「あら。今度は私ね」
ヤバい。
誰もがそう思うほどの王様とは。
「美奈か……とんでもない命令が来るんだろうな」
「大丈夫よ明良。私だってそこまで鬼じゃないわ」
一瞬、美奈は一同を安心させるかのような言葉を告げる。
「それじゃあ、6番と18番の人がキスしなさい」
「えらく直線的なのキター!?」
一同の予想を斜め45度逸らした命令が返ってきた。
思わず健太はそんな風に突っ込みを入れてしまっていた。
「あ、言い忘れてたけど、無論、ディープキスの方よ」
「やかましいわ!!」
暴走を続ける美奈に対して、大貴が吠える。
しかし、美奈はこんな程度のことだと動じなかった。
「何してるのよ。ほら、さっさとキスを始めなさい」
「いや、流石にディープなのはやめた方がいいだろ!」
「そうだよ。流石にそれは僕も許さない」
「……明良が言うんじゃ仕方ないわね。普通のキスで良いわ。ただし、抱き合いながらね」
「サラリとオプション設定までつけないでよ!」
ディープキスという条件は外れたものの、更に別の条件が課せられていた。
「で、6番と18番って、誰なんだ?」
「ろ、6番は僕……」
何と、和樹が名乗り出た。
「18番は……私だよ」
顔を赤くしながら、美夢が言った。
「……本命カップルじゃないの」
「何の話?」
「こっちの話よ……さあ、早くやりなさい」
美奈は、不敵な笑みを溢しながら言った。
「……」
「じゃあ……始めるよ?」
和樹がそう宣言すると共に、美夢のことを抱き締める。
そして。
(チュッ)
キスを、した。
その瞬間、二人だけではなく、周りの人の顔まで赤くなっていた。
「……ところで、そろそろ眠くなってきたんですけど」
「あら?もうそんな時間かしら」
杏子が目を擦りながら言ってきたので、美奈は時計を確認する。
午後11:26。
時計には確かにそう表示されていた。
「もうこんな時間か……みんな、そろそろ休んだ方がいいよ。疲れてるだろうしね」
「そうですね……では、そうさせて頂きます」
健太が代表してそう言うと、一同は協力して片付け始めた。
「さて。今日はこの辺でお開きということにして、今日はもう寝ましょうか」
美奈の提案に反対する者は誰もいなかった。
こうして健太達は、騒がしいクリスマスを過ごしたのだった。
オチが弱いですが、これにて『私立相馬学園〜a daily life〜』二学期を終わりに致します。
次回に登場人物紹介を載せた後に、その200からは三学期に突入したいと思います。