その198 旅先でのクリスマス 10番目
「それじゃあ、おまちかねの王様ゲームを開始するわ」
「誰も待ってねぇよ」
大貴がそう突っ込むが、美奈は無視する。
「本日は十九名で行うため、王様の他には、番号は1〜18までです」
「ちゃっかり明良さんまで入ってるんだね」
健太は呟いた。
「では、まずはこの箸を引きなさい」
そう言って、美奈は紙コップに入った箸を見せる。
見ると、確かにそこには19本の箸が入っていた。
「何でもう準備してんだよ……」
「さっき準備したわ」
さも当然のように、美奈は言う。
「お前……本当に用意周到だな」
「とにかく、早く引きなさい」
「何故に命令口調なんだよ……分かったよ」
明良を含めた18人は、コップの中より箸を引く。
最後に美奈が箸を引くと、
「「「「「「王様だ〜れだ!?」」」」」」
お決まりの文句を言って、箸を見る。
なんだかんだ言って、結構ノリノリである。
「お?俺だな」
引いたのは、智也だった。
一同のボルテージが一気に冷める。
「何で?」
「だって、あんたが王様だと、どうせ筋トレ40回とかでしょ」
「何でそんな微妙な回数なんだよ!……間違ってはないけどよ」
やはり、と言った顔をして美奈は頷いた。
「じゃあ……3番と10番の人は腕立て200回」
「うおっ!」
「がはっ!」
「……アンタ達か。結構ベタね」
当てられたのは、和秀と吉行の二人だった。
一同は、そんな二人を見て、ベタだなぁと心の中で呟いていたという。
「そんなのやりたかねぇよ!」
「ちなみに、王様に反抗したら、二倍に……」
「「喜んでやらせていただきます!!」」
美奈の言葉がいい終わる前に、二人は腕立てを始める。
だが、開始してから30回辺りで、二人はへばった。
「だらしないわね……」
「「余計な御世話だ!!」」
「とりあえずこれで勘弁してあげるから……次よ!」
と言って、一同から箸を回収して、シャッフルする。
そして、もう一度新たな箸を引く。
「「「「「「王様だ〜れだ!?」」」」」」
「今度は私?」
次の王様は、どうやら真緒のようだ。
「お?これは期待できるかも……」
「何よその期待は……えっと、1番と9番の人が、ポッキーゲーム」
「ぽ、ポッキーゲーム?」
ポッキーゲームと言えば、二人でやるゲームであり、一本のポッキーを、二人が向かい合わさる形で食べ、先にポッキーから口を離した方の負けという、宴会などでよく見る遊びの一つだ。
「な、なんて破廉恥な……」
どこぞのキャラクターのセリフのようなことを、マコは言う。
「んで、誰がやるんだ?」
「い、一番は私です……」
おずおずと、美空が名乗りだす。
「9番は、私です……」
続いて、夏美が名乗り出た。
「こ、これはヤバい……」
見る前から、ヤバい展開になることは安易に想像出来ることであった。
それを理解してか、美奈は二人にポッキーを渡す。
「さぁ、始めなさい」
「「……」」
恥ずかしいのか、なかなか始める気にはなれない二人。
「……いきます」
「……私も、大丈夫ですよ」
やがて覚悟を決めたのか。
二人は一本のポッキーの右側を美空が、左側を夏美がくわえる。
そして。
(ポリッ)
食べ始めた。
「グッ……」
「な、何だか興奮しますね」
美空と夏美が食べているところを見て、杏子が思わず呟いていた。
「私も、いつか……」
「ん?何か言った?」
何かを呟きかけた真弓に気付いたのか。
健太は、真弓にそう尋ねた。
「何でもないです」
顔を赤くして、真弓は否定する。
そんな中でも、美空と夏美のポッキーゲームは続く。
見ると、ほとんど唇は近づいていた。
「こうして見ると、本当にキスしあってるようにしか見えないわね……」
真緒がそう呟いたその時。
(ポキッ)
無惨にも、後少しで唇同士がくっつくと言った状況で、ポッキーは折れた。