その197 旅先でのクリスマス 9番目
「結局、勝者は出ず、か」
結局、健太と和樹のどちらかが勝ったとかの勝敗はつかなかった。
よって、両チームに課せられる予定だった罰ゲームもなくなったということになる。
「けど楽しかったな〜。二人ともカッコよかったし」
「そ、そうかな……」
「そう言われると、照れるかな……」
音羽に褒められて、健太と和樹の二人は照れた様子で答える。
それを面白くなさそうに見る人物がいた。
「もう……和樹君ったら。デレデレしちゃって」
「健太君……ボクじゃ不満?」
美夢とマコだった。
「い、いや、別にデレデレなんてしてはいないよ……」
「ていうかマコ。不満って何さ」
和樹は説得するように、健太は訳が分からないと言ったような感じでそう言った。
「まったく。つくづく女殺しな奴だな、あいつら」
「だな」
吉行と和秀は、そのことに関しては意見が一致したらしい。
互いの顔を見て、頷き合っていた。
「でも、これじゃあ面白くないわね……そうだ!」
「な、何か思い浮かんだんですか?」
美奈の顔を見て、夏美が尋ねる。
その顔は、嫌な予感がすると言ったような感じのものであった。
「今日このあと、私達はクリスマスパーティーをするじゃない?」
「そうですね……でも、それがどうかしたんですか?」
今度は美空が尋ねる。
すると、美奈は面白そうな笑みを浮かべて、
「王様ゲームをするわよ!」
と、一同に告げた。
瞬間。
「「「「「「「……」」」」」」」
訪れる、静寂の時間。
顔は、美奈の方を向いていた。
「この雪合戦で罰ゲームを課せられるチームが決まらなかったんだもの。なら、ここは旅行の
定番とも言われている王様ゲームをするべきでしょ!」
「どう言う結論からそう言う風になったんだよ」
若干呆れたような感じで、智也が言う。
「大体、王様ゲームっていつから旅行の定番になったんだ?修学旅行でもやるところなんて
あまり聞かないぞ」
「今よ」
「今決めたの!?」
健太が久し振りに突っ込みを入れていた。
「ったく、中川はいつも突発的だから、いつ何を言うのかわからねぇなぁ……」
「アハハ……美奈はそう言う人だから」
かなえが呟く大貴に向かってそう言った
「分かったらさっさとクリスマスパーティーの準備をするわよ!」
「いつにもなく張り切ってるな、あいつ」
「そうだね」
指揮をとる美奈を見て、吉行と健太は同意する。
「ほらそこ!ボサッとしない!」
「はいはい……」
何故か美奈と同じ様に指揮をとるミサに連れられて、健太達は一先ずペンションの中へと戻った。
「よし。そろそろかしらね」
あれから小一時間が経過し、健太達は明良の協力もあり、割りと速く準備をすることが出来た。
そして、これからクリスマスパーティーが始まるのだと言う。
「本日は、何かの縁に結ばれていたのか、四季高校に通っている和樹とその愉快な仲間達に会うことが出来て、本当に喜ばしい限りです」
「おい、愉快な仲間達って何だよ!」
和秀が突っ込むが、美奈はそれを流し、スピーチを続ける。
「つきましては、本日のクリスマスパーティーは、和樹達を含めた十九人で行いたいと思います」
「あ、僕の分も入ってるんだね」
「当然じゃない」
美奈は更に言葉を重ねる。
「パーティー終盤には、王様ゲームが待ち受けてるので、くれぐれも逃げないように」
「誰が逃げるかよ」
「結構な心意気ね……それじゃあ、グラスを持って」
(コトッ)
一同は、ジュースが入ったグラスを持つ。
そして。
「乾杯!」
グラス同士の衝突音が鳴り響き、クリスマスパーティーの始まりを告げた。