その196 旅先でのクリスマス 8番目
久しぶりの二話投稿です。
しばらく雪玉を投げ合っている内に、残るは互いのグループ双方とも一人ずつ。
一人は健太。
もう一人は、和樹だ。
「やっぱりこの二人が残ったか」
「どうやらこの勝負、どっちが勝つかによって勝敗が決するわね」
「……いや、見て分かるだろ」
美奈の言葉に、何時ものように大貴が突っ込みを入れる。
「さて、残るは僕と健太の二人だ。そして、残りライフも同率で、2だ」
あの後、何とか健太は当たらずに済んだ。その一方で、和樹は一発当たっていた。
なので、二人共残りライフは2というわけだ。
「互いに互角。これ以上に面白い展開はないね!」
「ゴーカートの時の屈辱は、ここで晴らす!」
「いやぁ、何だか熱いわね」
「そ、そうですね……」
真剣な眼差しで互いを見る健太達を見て、ミサが美空に言う。
美空は、曖昧な返事を返してきた。
「それじゃあ……行くよ」
先手をとったのは、健太だ。
素早く雪玉をつくり、和樹に投げる。
和樹はそれを軽く避けると、すかさず反撃をする。
だが、健太はそれを体を捻らせることで避ける。
更に健太は、その反動を利用して、あらかじめつくってあった雪玉を手に取り、それを投げる。
すると。
(バシャッ)
今回は攻撃を当てることに成功したみたいだった。
これで、健太の方が有利となる。
「これでも喰らえ!!」
和樹は雪玉を思い切り投げてくる。
健太はその雪玉を避けることが出来なかった。
(バシャッ)
これで、健太と和樹に差はなくなった。
「一発でも当てれば、僕の勝ちだ」
「それはこっちも一緒だよ」
お互い不敵の笑みを見せる。
それは、いつもの彼らならまず見せることのない表情。
恐らく、この雪合戦を本気で楽しんでいるからこそ、見せられる表情なのかもしれない。
「面白くなって来たよ、和樹!」
「こっちもだよ、健太!」
「……あの、これ、何のバトルマンガ?」
思わず吉行がそう呟いてしまっていた。
そんなことは構わず、二人の勝負は続く。
「くっ!」
「このっ!!」
(ヒュンヒュン)
「あたっ!いてっ!」
何故か流れ弾のほとんどが、吉行に直撃していた。
「どれだけ運がないの、お兄ちゃん……」
その運のなさに、杏子は呆れていた。
「そこだ!」
(ヒュッ)
一瞬の隙をついて、和樹は健太に雪玉を投げる。
しかし、健太はその雪玉の存在に気づくと、すぐに対処に移る。
その雪玉を避け、新たな雪玉を作り、投げる。
「おっと!」
和樹もこれを避ける。
この時点で、互いの息は荒くなっていた。
「ハァハァ……」
「ハァ……やるね、健太」
「和樹こそ……次の一発で、決着にしない?」
健太がここで、こんな提案をして来た。
「いいよ……そろそろ決着をつけないといけないと思ったから」
「だよね……このままじゃ、いつまで経っても決着がつかないもの」
互いに、雪玉を一つだけ持つ。
「「……」」
流れる、静寂の時間。
「……行くよ」
「こっちこそ」
(ダッ!)
二人は走りだす。
そして、すれ違う瞬間。
(ヒュッ)
二人は雪玉を、投げた。