その192 旅先でのクリスマス 4番目
部屋に案内された健太達は、早速荷物を整理し、それを終えた。
今は、廊下を歩きながら、昼食会場へと向かっている最中だった。
と言っても、男子と女子では準備の早さが違うのか、今は男子だけなのだが。
「ちょっと早いけど、今日はクリスマスパーティーを開くんだったな」
「え?今日って確か、クリスマスイブじゃなかったっけ?」
呟いた吉行に、健太が尋ねる。
「……時期ぴったりじゃねぇか、おい」
「何言ってんだよ、吉行」
遠くを見つめながら、吉行は呟く。
そんな吉行を見て、智也は思わずそう突っ込んでいた。
「そんなことより、今は昼食だな。それからスキーとかやるみたいだし」
大貴が歩きながらそう言う。
「それもそうだな。というわけで、早く向かうとしましょうか」
健太達は、少々足を速めた。
「「「「おお〜〜!!」」」」
四人がやって来た時には、すでにテーブルの上には食事が並べられていた。
その食事が、また何とも豪華な物なのであった。
昼食ということもあり、あまり重い物は用意してはいなかったものの、サラダ・フルーツ・
その他諸々。
とにかく、目の前に並べられた食事は、どれもこれもおいしそうなものばかりなのであった。
「これは……」
「すげぇ……」
「これは……豪華だ」
それぞれ感想を言う。
そのどれもが、賛辞の言葉であった。
「喜んで貰えて嬉しいよ」
そう言いながら現れて来たのは、明良だ。
エプロンを着用している所から察するに、どうやらこれらの食事を作ったのは、明良と言うことになるのだろう。
「これ、全部明良さんが……?」
「ああ。一応そうだけど……」
「すげぇ……凄いっすよ、明良さん!俺に、料理を教えてください!」
吉行は、しゃがみこんで、頭を地面につけて、頼み込む。
明良は、そんな吉行を、困ったような表情を浮かべながら見る。
他の三人は、ただ呆れていた。
「あら、何してるのかしら?」
「中川達か……こいつのことは気にするな。ほっといてやれ」
智也は、美奈達にそう言った。
「そうですか……?」
「「!!」」
首を傾げる夏美を見て、大貴と智也はくらっときていた。
「あれは駄目ね。男子の中でまともなのが健太だけとは……」
ミサが呆れながらにそう言う。
「ま、まあ、とにかく早くに昼食を食べようよ!」
「いや、もうちょっと待って……きたきた」
明良が見た先には、和樹達の姿があった。
「うわぁ〜凄い〜!」
美夢が、テーブルに並べられている料理を見て、言う。
他の人達も、ほとんど同様の意見を述べていた。
「これ、明良さんが一人で……?惚れちゃいそうです」
「あはは、照れるな〜。けど、君にも好きな人くらい、いるだろう?」
「!!」
言われた本人である真弓は、そのまま膠着してしまう。
「あはははは……図星かい?」
「……」
真弓は、ちらりと健太の方を見る。
健太は、何故自分が見られてるのか分からないながらも、笑顔で真弓を見返した。
すると。
「!!」
真弓の顔は次第に赤くなっていく。
それだけで、音羽は感じた。
「(この子……もしかして……)」
「ま、とにかく、今は昼食を食べようじゃないか。みんな集まったことだし」
明良のその一言により、一同は昼食を取り始めた。