その180 社会科見学 1番目
十一月も終盤にさしかかり、とうとうこの時が来てしまった。
そう。
社会科見学の日である。
「はぁ」
「どうしたの?吉行」
集合場所に来て早々、吉行は溜め息をついていた。
「いやよ、なんだかいろいろと詰まった日常を送ってるとよ、たまには休みたくなると言うか」
「ああ……この何ヶ月間か、本当にいろんなことがあったもんね」
この数ヶ月のことを思い出して、健太も同意する。
改めて考えてみると、相当充実した毎日を送っていたのだろうと、健太は思った。
「ま、今日もこうして学校集合からの、フ○テレビだからな」
「でも、何でまたフ○テレビなんだろうね」
「さぁな……先生が行きたかったからじゃねぇの?」
「そうじゃない」
いきなり外川が現れて来た。
「あ、おはようございます。先生」
「おう、おはよう」
しかし、健太と吉行はあまり動揺しなかった。
こういうパターンには、ある程度慣れていた為だ。
「こういう時期のフ○テレビというのは、特にイベントも何もやってないし、お金も安い。
だから行くんだよ」
「うわぁ……裏事情ただ漏れですね……おはようございます、先生」
その時。
ちょうどいいタイミングで、かなえがやって来た。
「おはよう、かなえさん」
「おっす、相沢」
健太と吉行の二人も挨拶を交わす。
「あれ?まだ美奈は来てないの?」
「そうみたいだね……あ、来たっぽいよ」
何人かの集団が、健太達が向いている方からやって来る。
その中には、美奈やマコの姿も確認できた。
「お?倉木もいるな」
吉行は、その中から美空の姿も発見した。
「ミサもいるね」
かなえも、ミサの姿を見つける。
つまり、健太のクラスはほぼ全員やって来たということになる。
「このクラスは集合時間をちゃんと守るいいクラスだな。感心感心」
「先生、何歳ですか?」
思わず誰かが外川に言っていた。
「さて、全員揃った所で……」
「先生、他のクラスの人達は待たなくてもいいんですか?」
「ん?ああ、説明は各クラスで済ませてくれって言われてるから、大丈夫だ」
大貴の質問に外川は答えると、説明を始めた。
「さて、改めて目的地を言うと、今日はフ○テレビに行くことになっている。テレビ局の内側
とかを見て、ある程度学習するように」
「先生、フジテレビで勉強できることって、何でしょうか?」
「そうだな……一つの番組が出来るまでの苦労と、社会人とはここまで厳しいんだという、
大人の現実あたりかな」
「本当かよ……」
行ったことがあるのか。
吉行は小さな声でそう呟いていた。
「まぁ、それは建前だ……今日はもう存分に楽しんで来い」
「いいんですか?それで」
「まぁ、だってフ○テレビって言ったって、そんなに見学出来る場所ないだろ?仕方ないさ」
「先生達で目的地を決めてるわけなんですから、もっときちんとした所に行きましょうよ」
適当すぎる先生達への意見も含めて、クラスメイトの誰かがそう言った。
「ん?どうやら他のクラスの方も揃ったみたいだな……」
辺りを見渡し、外川がそう呟く。
「よっしゃ。それじゃあバスに乗り込むぞ〜」
外川は、その言葉を発すると同時に、バスがある所へと案内する。
そして、健太全員がバスに乗ったのを確認すると、そのまま目的地まで向かった。
ちょっとした骨休めということで。
しばらくこんな感じの話が続きます。