その165 流れで行われたデート 9番目
「……ぐっ!」
突如右肩を襲った、謎の痛み。
健太は、その痛みを確かめるかのように、左手をそっと右肩に寄せる。
そこからは、血が流れていた。
「……健太?どうしましたのその血は!?」
「……分からない。分からないけど、痛い……」
痛さのせいと、ゴンドラが直ったのか、再び動き始めたことによる揺れにより、健太の体は
ふらついてしまう。
そして、観覧車のゴンドラと言う物は、入口は自動ドアではない。
「……え?」
ふらついた体は、そのまま入口の扉に寄りかかる。
ずれたおかげで、その扉が開いてしまう。
そして……。
「……え」
そのまま、下へ落下した。
「け……健太ああああああああああああああああああああああああああ!!」
夕夏は飛び降りようとするが、
『お、お客様!危ないのでそこから出ないでください!!』
「け、けど、健太が!!」
『大丈夫です!プールに落ちましたから、外傷はほとんどありません!』
どうやら健太は、下にあった飛び込み用プールに落ちたようだった。
しかし、落ちたという事実には変わりはない。
「は、早くこのゴンドラを下に……!!」
夕夏はとにかく、目の前で発生した事態に対して、落ち着きを取り戻せないでいた。
「ちっ!外したか!!」
「何やってんだよ……このままじゃ俺達、殺されるぞ」
「冷静にそんなこと言われてもな……」
男は、髪の毛をかきながら言う。
その顔は、珍しく焦りの色を見せていた。
「……早速お出ましってわけか」
(ズラッ)
二人の周りには、謎の黒服の男達が五人立っていた。
「さて……パーティーの始まりだ」
その場から立ち去るように、二人は屋上より飛び降りた。
「……健太」
あれから健太は、プールから出され、すぐに病院に運ばれた。
その時の健太は、既に意識を失っていて、肩から血が出ていたことと、その状態でプールに
落ちてしまったことが原因で、体温は低下していて、血が足りないような状態であった。
「助かるよね……お兄ちゃんは助かるよね?」
「ああ……命に別条はないだろうさ。やられたのは肩だけだからな」
不安がる美咲を、大貴は元気づけるように言った。
「けど……一体誰がこんなことを……」
かなえがそう呟いたその時。
(パッ)
手術室の明かりが消え、中から医者が現れた。
「ど、どうでしたか?」
夕夏が医者に尋ねる。
医者は、安心づけるかのように言った。
「手術は成功しました……命に別条はありませんでした。後は、目覚めるのを待つだけです」
「そうですか……ありがとうございました」
夕夏は、一同を代表してお礼を言った。
そして、健太は手術室から病室へと運び込まれていく。
「……どうして、こんなことになったんだろう……」
夕夏は、今日の出来事を思い浮かべる。
先ほどまで楽しいと思っていたことが、たった一つのことがきっかけとなり、それが壊れてしまった。
夕夏は、本日健太と出かけたことを、今更のように後悔したのだった。
次回より……私が合宿に行くという関係上、番外編を挟みたいと思います。