その164 流れで行われたデート 8番目
デパートの中にあるエレベーターで屋上に向かう二人。
数分もたたないうちに、エレベーターは屋上に到着した。
「着いたみたいだね」
(ガー)
自然と扉は開く。
そして、目の前に広がった光景は……。
「「おお〜」」
屋上にあるとはいえ、立派な遊園地が広がっていた。
もちろん、広さの関係上ジェットコースターとかお化け屋敷はないが。
観覧車に飛び込み用プール(?)、メリーゴーランドが用意されていた(どれも普通の遊園地
よりは少しサイズが小さめ)。
「結構本格的な所なんだね」
「そうですわね……それでは、観覧車に乗りません?」
「だね」
夕夏の提案に、健太も賛成する。
二人はそのまま観覧車の方へと歩いて行った。
途中、真横にプールが置かれてあったので、誰かいるのかと見てみたはいいものの、誰も飛び込んでいる様子はなく、寂しく水が張ってあるのみであった。
「間近で見ると、もっと大きいんですのね」
「デパートの屋上に設置してあるのに、ここまで出来るんだね」
改めて、二人はその大きさに驚くのであった。
もう少しコンパクトなのかと思ったら、充分に楽しめるくらいの大きさはあった。
一周回るのに、2,30分はかかることだろう。
「それじゃあ、中に……」
ちょうどやって来たゴンドラに、二人は乗り込む。
健太が扉を閉めると、ちょうどゴンドラは上へ昇り始めた。
「うわぁ〜街が小さく見えますわよ」
「うん……そうだね」
中から見る光景はなかなかに絶景だった。
普段歩いている街が小さく見え、人が歩いている様子なんかもはっきり見えている。
晴れているおかげもあってか、その先の建物まで見ることが出来た。
「ゆっくりで落ち着きますわね」
「あまりに速すぎると乗りたくなくなるものね」
そのとおりであり、観覧車というのは、ゆっくりであるからこそ乗りたくなるものなのである。
ちょうど健太と夕夏の乗るゴンドラが、頂上まで来たときのことだった。
(ガタン!)
「「ん?」」
突如、ゴンドラは止まりだす。
そして告げられる、アナウンス。
『申し訳ございません。機械のトラブルにより、すべてのアトラクションが停止してしまいました。只今調整中ですので、もう少しお待ちください』
「機械の故障か……まぁ、時間はまだあることだし、ゆっくりしていればいいかな?」
幸いにも、この時の二人にはまだ時間があった。
なので、このトラブルも、思ったよりは苦痛にはならなかったらしい。
この時間を利用して、二人は様々な話をした。
学校でのこと。
健太の中学生の時のこと。
夕夏の家の話など。
「……日が暮れて来たね」
来た時間が遅かったのもあるが、いつの間にか夕日が沈み始めていた。
それにつられて、周りも赤く染まり始める。
「……今日はどうたったかな?」
健太が夕夏に尋ねる。
すると夕夏は、
「ええ、楽しかった……ですわ」
と、若干顔を赤くして答えた。
「そっか……よかった」
健太は安心したように、笑顔でそう呟く。
その笑顔を見た夕夏は、若干更に顔を赤くする。
「どうしたの?顔が赤いよ?」
それに気づいた健太は、そのことを夕夏に指摘する。
すると夕夏は、外を見て、
「こ、これは夕日のせいですわ」
と、弁解した。
「そ、そう?」
つられて、健太も外を見る。
夕夏とは反対方向にだが。
と、その時。
「……ん?」
健太は何かに気づく。
「(何か一瞬、向こうが光った気が……)」
「?どうかなさいまして?」
「あ、ううん。なんでもないよ」
尋ねて来た夕夏に、健太はそう答える。
その光の正体に若干の疑問を感じながらも、健太は前を向こうとした。
すると、
(バラッ)
「あ」
ポケットの中より、小銭等が散らばる。
それは、夕夏の席の足元にまで散らばっていた。
「何してるんですの、健太……」
「いや、ちゃんと入ってなかったみたいで」
そう言いながら、健太は小銭を拾い始めた……。
その時だった。
次回で、この話も終わりです。
同時に、ものすごい急展開が待ってます。