その158 流れで行われたデート 2番目
水族館に辿りついた二人は、その前で突っ立っていた。
「……結構でかいのですね」
「まぁ、水族館と言うと、このくらいのでかさがないと展示が出来ないからね」
健太は、そんな夕夏に説明するように言う。
夕夏はそれでも驚きを隠せないらしく、周りを見回している。
「とりあえず、中に入らないことには始まらないから、夕夏さん。ほら、早く入ろうよ」
(パシッ)
「……え?」
夕夏は、健太が自然と自らの手を握って来たことに対して、驚きを見せる。
「?どうしたの?」
「い、いえ、なんでもありませんわ……それでは、参りましょう!」
「……?」
顔を少し赤くする夕夏に対して、全く分からないと言った表情を見せる健太。
多少の疑問を残しながらも、健太は夕夏を連れて、中へはいる為に自動ドアの前に立つ。
(ウィ〜ン)
何事もなくその扉が開かれて、二人を中へと招待する。
健太と夕夏の二人は、中へ入り、受付近くの所の券売機でチケットを買う。
「ここでチケットを買わなければならないのですね?」
「まぁ、整理券みたいなものだしね」
それを二枚購入した後、受付の人に見せて、いよいよ展示室へと向かう。
展示室に行くまでには、海底トンネルをイメージしたような、地面が動く歩道が敷かれた道を
通って行くらしい。
周りに見える光景は、とても幻想的な光景であった。
「うわぁ……凄い」
通路の外から見える光景とは、魚達が優雅に、力強く泳いでいる光景であった。
自分達の周りを泳ぐように、様々な種類の魚達が泳いでいた。
「まるで、海の中にいるみたいですわ……」
「僕も、こんな光景は始めてだ……来てよかったかも」
健太も、感動していた。
そして、こんな近くに凄い水族館があったことを、今更ながら誇りに思った。
「それじゃあ、順路通りに行くと、まずは深海魚のコーナーだね」
「どんな魚がいるのか楽しみですわ〜!」
夕夏は、水槽内トンネル(後程分かった)の光景を見て興奮しているのか、いつもより目が輝いていた。
それは、子供のような瞳。
年齢相当の、少女の瞳であった。
「夕夏さん、楽しいかな?」
そんな様子の夕夏に対して、健太はそう尋ねる。
すると、楽しげな表情を見せて、
「ええ!とっても楽しいですわ!」
と、言った。
「そっか……なら、今日ここに来た甲斐があったよ」
「ええ!」
その健太の言葉をどう受け取ったのかは知らないが、夕夏はやはり笑顔でそう答えた。
そうしている内に、トンネルを潜り終え、続いてはいよいよ展示室の中に入ることとなる。
「いよいよね……」
「そうだね。けど、何もそこまで緊張しなくても大丈夫だと思うんだけど……」
緊張している様子の夕夏を見て、健太はそう言った。
「いえ、これから色んな魚に会えると思うと、何だか……」
「大丈夫だって。魚の方だって逃げやしないし、それに緊張してると、あまり楽しく見れないよ?」
言われて、夕夏は深呼吸をする。
いくらか緊張は解れたらしく、肩より力が抜けたような気がした。
「……それじゃあ、行きましょう」
と、夕夏が言って、いざ歩き出そうとしたその時だった。
「あれ?もしかして、健太?」
「うん?」
健太は、自分の名前を呼んだ人物を確かめる為に、その方向を向く。
すると、そこには……。
最後の方に登場したのは……