番外編その11 厄介な来訪人 2番目
「……お見合い?」
その単語を聞いた時、咲は自分の耳がおかしくなったのではないかと疑った。
しかし、何度も頭の中で再生してみたところで、お見合いにしか聞こえなかった。
「ということは……今日の夕夏さんの予定は、会食会ではなく、お見合い?」
「……ええ。もう隠しても仕方ありませんからいいますけど、その通りよ」
健太の言葉に対して、とうとう観念したのか。
夕夏は本当のことを言った。
「佐伯が……お見合い」
「まぁ、お見合いって言うのは、必ずしも結婚するわけじゃないわよね。大抵の場合、
お見合いなんかをした場合には失敗する例の方が多いし」
「おい!何だよその、まさしく俺のことを否定するような発言は!!」
将太は、自分の存在を全否定するような美奈の発言に訂正を求める。
しかし、美奈がそんなこと聞くはずもなく、流されてしまった。
「さて、あなた。今お見合いって言ったわよね?」
「ああ、そうだけど……」
「あなたのような、お金だけの男に、夕夏のことを幸せに出来るのかしら?」
「なっ……何を言い出すのやら?僕以外に、夕夏にピッタリの男なんて居るわけないじゃないか」
「うわ……ナルシストだ」
髪の毛を掻き上げながら、カッコつけるようにそう言った将太に対して、マコは思わず
そんなことを呟いてしまった。
「だから、こいつとだけはお見合いするのは嫌なのよ……」
「知ってるぜ……嫌よ嫌よも好きの内ってな」
「それは大分前の歌のことな〜。別に必ずしもそうってわけじゃないし、佐伯はどうやら本気
でお前のことが嫌いらしいぞ」
「そんなはずない!こんなにも愛しているのに……」
「わかんねぇよ」
どんどん突っ込みを入れていく大貴と吉行。
かなえも、将太のことを不思議そうに眺めている。
咲に至っては、敵意を示すほどだ。
「こんな安男に、親友を預けられるわけないわ……もっと頼りがいのある男じゃないと」
「それじゃあ、健太で決定じゃね?」
吉行が、大きな爆弾を落下させた瞬間だった。
「「……え?」」
「そ、それは駄目!」
突如、顔を赤くしてマコが猛抗議する。
「何故に?だって健太は一番しっかりしてて頼りがいあるじゃん」
「俺が言うのも難だが……この中では一番頼りがいある人物だ」
「確かに健太君は頼りがいがあるけど、でも……!!」
「あ〜はいはい。健太が取られると思ってるのね、マコは」
「……!!」
ミサにそう言われたマコは、顔を赤くして、何も言えなくなってしまった。
「……」
「どうしたのかしら?かなえ」
「ひっ!な、なんでもないよ……美奈」
何か恐怖を植え付けるような眼で、美奈はかなえのことを見る。
そんな雰囲気になってしまったので。
「おい!俺がいること忘れてるんじゃねぇのか……?」
我慢できなかった将太が、話に介入して来た。
「悪かった……で?何の話だっけ?」
「健太の彼女にふさわしいのは誰でしょうか?って話じゃね?」
「ちげぇよ!俺が一番夕夏にふさわしいって話だよ!!」
半ばやけくそになって、将太は言った。
「けどよ、お前に夕夏は合わないと思うぜ?」
「そうだね。夕夏の性格とあんたの性格は、合わないわ、絶対」
「例え結婚したとしても、1週間で即離婚ね」
「みんな結構びしばし言うね……」
健太は、さんざん叩きまくっている一同に向かって、そう言った。
「だって、こいつだもん」
「結構ひどい連中だな、おい」
将太は、思わず泣きそうな表情をしながら、ようやっと一言そう呟いた。