その14 オリエンテーション旅行 2番目
二番目です。
次回からようやっと宿の話です。
同じ頃、かなえも家を出ていて、住宅街の中を歩いていた。
「今日から旅行かぁ」
かなえも大荷物を肩にかけている。
すると、
「かなえ」
「あ、美奈。おはよう」
美奈がやってきて、合流した。
こちらもやはり大荷物だ。
「楽しみだね、オリエンテーション旅行」
「こういう校外学習というのは、何かがあるんだよね」
(キラ〜ン)
美奈の目元が何故か光ったようにも見えたが、そこは置いておこう。
「ねぇ美奈。そのバックの中には何が入ってるの?」
吉行同様、美奈のかばんもまた、異常なまでの膨れぷりを見せていた。そんなかばんを見て
かなえは、そう尋ねる他なかったのである。
「よくぞ聞いてくれたかなえくん!!」
「は、はぁ」
「この中にはな、大量のまんが本が入っているのだ!」
大声でそう言ったところで、言っている内容はまったく駄目人間が行うことである。
「……美奈、申し訳ないかもしれないけど、まんが本は持ち込み禁止のはず……」
「甘いわね」
美奈は冷静にそう言った。
「いまどき生徒のかばんの中身を漁ってまで禁止物を発見する先生なんていないわよ」
さらりと恐ろしいことを言っていた。
「は、はぁ」
かなえは呆れる他なかったのであった。
そして、健太と吉行の2人は、集合場所である電車の駅に到着した。
ホームの中を入っていくと、
「おす!木村に海田」
担任である外川の姿があった。
「あ、先生。おはようございます」
一応健太はあいさつをした。
「あれ?まだ誰も来てない……」
「そうだ。お前らが1番乗りだからな。他のクラスもまだいない」
「え?そうなんですか?」
思わず腑抜けてしまった健太。
きっと、誰かは来ているのだろうと思っていたに違いない。
「どした?健太。いとしの彼女はまだ来てないぞ」
「いや、僕に彼女なんていないから」
「へぇ〜木村って彼女いたんだな。青春だね〜」
外川も、にやにやして健太を茶化す。
「せ、先生まで……」
健太は外川にまで呆れてしまった。
「青春はいいぞ〜。先生なんか、先生なんか……うう」
「過去に一体何があったんですか先生」
健太はとりあえずそう突っ込んでおいた。
「先生、おはようございます」
「おはよう、外川」
そんなときに、かなえと美奈の2人は来た。
「おはよう。って、中川、教師を呼び捨てにするなと言ってるだろ!」
「いいじゃないの。ちびっ子先生が登場するあの有名な……」
「それ以上は著作権上の問題があるから言うな。分かったから呼び捨てにせず、敬語を使って
話せ!」
外川はそう美奈に注意する、が。
美奈の暴走は止まらない。
「外川、お前ミス○スだったのか。ここにいると、ぐ……」
「だから、著作権に気を使うことを言うな!」
「絶望した!!」
「……吉行、それもパクリだから」
美奈だけでなく、ここにいる全員が壊れ始めてきた。
「ねぇかなえさん。美奈さんっていつもあんな感じなの?」
「えっと、美奈はいろんなアニメや漫画のことを知ってるから。ドラえもんからシ○ナまで
様々。私はほとんど知らなくて話についていけないんだけど」
「へ、へぇ……(美奈さんってすごいなぁ〜。ていうか、女子でアキバ系って……)」
健太は少し呆れた。
「お?いつの間にか皆も来たようだな。よし、出発だ!」
「は〜い!」
「グランド○インを目指して!」
「目指さなくていいから」
いつの間にか来ていた大貴がそう突っ込んだが、美奈の耳には届いてはいなかった。
かくして1年生たちは、8時20分発の電車へと乗り込んだ。