番外編その10 厄介な来訪人 1番目
新キャラ登場の巻です。
とある病室の一角。
そこの部屋は個室であり、一人しか入っていないという。
プレートの所には、『佐伯夕夏』という名前が書かれていた。
少年は、迷わずその部屋の前まで歩いて行く。
左手には赤いバラの花束が握られていた。
少年の顔は、笑顔だった。
「……ここだな。夕夏が入院しているって言う病室は」
少年は、誰に言うまでもなく呟く。
「でも、交通事故だって聞いた時は本当に驚いたよ。まさか、俺とのお見合いの日に事故に
遭うなんて……トラックの運転手は許せないな」
少年の口から出て来た、『お見合い』という単語。
どうやらこの少年は、夕夏の言っていたお見合い相手のようだった。
「……よし」
(コンコン)
少年は扉をノックする。
と同時に。
(ガチャッ)
扉を開き、中へと入る。
「「「「「……」」」」」
中には大勢の人が入っていた。
その誰もが、少年にとって見たことのない人物だった。
最も、夕夏を除いたとして、一人だけ見覚えのある人物も混ざっていた。
「あなた……誰ですか?」
その内の一人……黒い髪の少年が尋ねて来た。
「あなた……誰ですか?」
健太は、突然入って来た謎の少年に、そう尋ねた。
少年の特徴は次の通りであった。
中央だけ白くなっている、赤い髪。
顔は整っているほうなのだが、チャラ男を連想させるような顔。
しかしそれでいて、服装はかなりオシャレで、少なくとも貧乏ではなさそうであった。
何故か、左手にはバラの花束が握られていた。
「俺の名前かい?それは夕夏に聞けば分かるんじゃないかい?」
少年は、健太のことを見ずに、花瓶の方を見てそう言った。
「花がすでに……」
「この人、夕夏さんの知り合いなの?」
少年が花を入れる場所がないと嘆いているのを無視して、夕夏にそう尋ねる。
すると、夕夏は苦い顔をしながら、
「ええ……残念ながら知り合いですわ。本当なら、赤の他人と言いたいところだけど」
「おいおいそれはないんじゃないの?俺のフィアンセよ〜」
「「「「「ふ……フィアンセ?」」」」
何人かの声が重なってしまう。
「フィアンセって……何だ?」
(ズルッ)
吉行がそう呟いたところ、少年はその場でズッコケてしまった。
「よ、吉行……それ、本気で言ってる?」
「ああ……わりと」
「こいつ馬鹿だな」
間髪入れずに、大地がそう突っ込みを入れていた。
「フィアンセって言うのは、婚約者と言う意味を表す英単語よ」
分かりやすい説明を、由美が入れてくれた。
「と言うことは……佐伯って、すでに結婚してるのか!?」
(ガンッ!)
「そんなわけないでしょ!!」
夕夏による制裁が、吉行の脳天に直撃した。
「あれは痛いな……マジで」
大貴は思わずそう呟いた。
「それで、あなたは一体……?」
先ほど健太がした質問を、今度は咲がする。
すると、少年は待ってましたと言わんばかりの表情と共に、
「俺の名前は白銀将太。本日夕夏とお見合いする予定だった者だ」
少年―――白銀将太は、何だか眩しい(?)笑顔を見せて、そう言った。