その149 交通事故 1番目
今回は前回の補足的話。
コンサートが終わり、その帰り道での話だった。
「いやぁ〜やっぱMAKOちゃんの歌は最高だな!!」
「まさかあそこまでうまいとは思ってなかったぜ……」
満足そうに言う吉行と、予想外と言った顔をしている大地。
大貴は、そんな二人に、
「まっ、仮にも雛森はアイドルだからな。後吉行、お前はもう少し自重しろ」
「これで俺は生きていける!!」
大貴の指摘を、吉行は軽く無視した。
「それにしても、まさか健太が当たるとはね……健太もよほどの幸運の持ち主ね」
「まさか僕も当たるとは思ってなかったよ」
自らの幸運に対して、健太は驚きを感じていた。
それは他の人も同様で、自分達の中からまさか当選者が出るとは思ってなかったらしい。
「それだけ、雛森と健太の絆が固かったのかもな」
「そ、そうなのかな……?」
大貴にそう言われて、健太は少し照れ臭くなる。
そんな様子の健太を、
「……」
かなえは微妙な顔をして見つめていた。
その心の中では、
「(やっぱり、健太君は雛森さんのこと……)」
「あの、どうかしたの?」
「ふぇ?あ、いや、別にどうもしないよ」
心配そうに覗きこんできた由美に対して、かなえは慌てた様子で答えた。
「しかし、幽霊って言うのはある意味便利ですわね。姿を消したい時に消せば、入場料が無料ですもの」
「それを利用して、壇上に上がったりね」
「そんなことしてたの!?」
「ええ。ずっと健太の隣にいたわよ、その二人」
まさか美奈に指摘されるとは思わなかった二人は、ギョッとしたような表情になる。
いや、考えてもみれば、そのことを指摘出来るのは美奈のみとも考えられる。
何故なら、姿を消した二人を、美奈は何故か見ることが出来るからだ。
「本当に謎だ……何で中川だけ」
「それはきっと、奇跡ね」
吉行の呟きに、ミサが答えた。
「マコはコンサートの後片付けで遅くなる……あれって、裏方の仕事じゃなかったんだ」
「いや、確かそれは裏方の仕事だぜ。少なくとも、主役であるマコちゃんの仕事じゃないはずだ」
「なら、どうして?」
考える男子四人組。
それに対して、女子五人組は、すでに答えが出ているようだった。
「何だよお前ら。理由がわかってるって言うのかよ?」
そんな女子達に対して、吉行が尋ねる。
「分かってるわよ。けど、あなたには内緒よ」
「はぁ!?」
そう言われても、吉行は納得がいかない。
そのことに抗議はしてみるが、女子は聞く耳持たずと言ったところだった。
……別にマコに、男には話せない理由があったわけではない。
ここで、なぜマコが片付けの手伝いをしているのか、その理由を説明することにしよう。
と言っても、まとめれば一行でまとまるのだが。
ただ単に、マコはいつもお世話になっている人達に、感謝の意を示したいだけなのだ。
「そんな一行の真相を知りたいがためにこんなにむきになって……」
「何か言ったか?」
「別に」
美奈は、吉行の追い討ちを軽く受け流した。
次回、急展開を見せる!!