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その148 コンサート 4番目

周りから聞こえる『MAKO』コールが、会場内に響く。

野外コンサートというだけあって、気温の関係もあるのだろうが、とにかく熱気がすごかった。


「MAKOちゃ「ん!!MA「KOちゃん!M「AKO「ちゃん!「!MAK「Oちゃん!」」」」」」」


自然とMAKOの名前を呼ぶ声が重なって行く。


「す、凄いのね……これが、アイドルのコンサート」

「夕夏さんは初めてだったりする?」

「当たり前でしょ……曲なんてそんなに聞かないもの」


夕夏は曲をあまり聞かないらしい。


「もうそろそろかな?」

「多分、そうだと思う」

「MAKOちゃ〜ん!!」


吉行が大きく叫んだ所で。



(プシュ〜!!)



煙が噴き出る音が聞こえて、『MAKO』が登場した。


「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」

「「「「わあああああああああああああああああああ!!」」」」


会場にいる人達の声は重なる。

その声に応えるかのように、MAKOは笑顔を振り撒き、観客に向かって大きく手を振る。

ただし、その笑顔はつくられたものではなく、心からこの場を楽しんでいるような、そんな笑顔だった。


「今日はいつも以上に笑顔が輝いてるぜ!!」


なので、吉行がそう指摘したのは、かなり的を射ていた。


「いろんなしがらみから解放されたからでしょうね」


美奈はそう言うと、健太の方を向く。


「へ?僕?」


まさか自分に振られるとは思ってなかったので、健太は少し驚きの声を出してしまった。


「あっ。そろそろ始まるみたいだよ」


由美がそう言ったのと同時に、MAKOは話し出した。


「みなさ〜ん!今日は私の為に会場に足を運んで頂き、誠にありがとうございます!」

「あらあら。私のことを褒めちゃって」

「……お前、絶対わざとだろ」


反応を見せた美奈に対して、すかさず大貴からの突っ込みが入る。


「今日のコンサートは外と言うことで、いつも以上に盛り上がれたら、嬉しいです!」

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」


MAKOの要望に応えるかの如く、会場に声が響く。


「それじゃあ始めます!まずは一曲目、聴いてください!」


その声と共に、曲が流れ出す。

同時に、会場内の空気がブァッと暑くなる。


「〜♪」

「へぇ……アイツって歌上手いのな」


大地が思わずそう呟く。

曲は、『元気』をイメージとした明るい曲だった。

聴く人全員を元気にするような、そんな曲だった。


「相変わらず、うまいな」

「そうだね」


聞き惚れる一同。

そして、あっという間に一曲目が終了した。


「ところでみなさん、入り口でお配りした整理券、持ってますか?」


ここでMAKOは、観客に向かってそう尋ねる。

一同からの答えは、もちろんYESだった。


「それじゃあ、本日のメインイベント!」



(ガラガラ)



その声と共に、舞台袖から何かが運ばれてきた。

それは、透明な箱の中に、何枚もの紙が入ったものであった。


「この中から一枚をボクが選んで、その番号が書かれている紙を持っている方は、壇上に上がって頂きます」

「「「「お〜」」」」

「そして、当選したラッキーな人は、もれなくボクのサイン入りCDと握手をプレゼント致します!!」


MAKOがそう言うのと同時に。


「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」


観客達の声は重なる。


「それでは発表しま〜す!」

「……こい、こい!!」

「……吉行、少しは自重しろ」

「……どうせ俺は駄目な人間……」

「それは自嘲だ」


吉行と大貴による、なんだか微妙な漫才が繰り広げられる中、MAKOは、


「(……健太君が当たるといいな)」


と、心の中で呟いていた。

そして、MAKOは箱の中から一枚の紙を選ぶ。



(ガサゴソ)



「「「「「「……」」」」」」


緊張による静寂の時間が流れる。

そして。



(スッ)



MAKOは、一枚の紙を引いた。


「では発表します。番号は……」



そして、その番号を読んだ。


「153番の人、どうぞこちらへ!!」

「153……へ?僕!?」


まさか自分が呼ばれるとは思っていなくて、健太は驚きを見せる。


「ほら、早く行けよ、健太……お前だったから、許す」

「あ、う、うん」


健太は檀上に上がり、MAKOを見る。


「(……健太君が当たってくれたんだ。ボク、嬉しいよ)」

「(あ、ありがとう……)」


小さな声でそう呟いた後、MAKOは健太に言った。


「それじゃあ、ボクのサイン入りCDと、握手のプレゼントをするね!!」



(ギュッ)



「あ、ありがとうございます……」


健太は若干顔を赤くして、そう答える。

するとMAKOは、


「どう致しまして♪」


極上の笑顔でそう答えた。

その笑顔は、『ファン』に対しての笑顔ではない。

『木村健太』という一人の少年に対しての笑顔。

その笑顔は、他の人達に見せる物となんら変わりはなく、同じものではない。


「……」


だから、そんな違和感に気づいた少女が、この会場内にいるのだった……。
















次回より、新しい話が始まります。

ちょっとした急展開です。

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