その147 コンサート 3番目
そして20分後。
ついに開場した。
「うわぁ〜な〜が〜さ〜れ〜る〜」
「いや、透けてるからね」
人の波に流されてるかのように見える大地だが、どうやら体が透けている為か、人が通り抜けてしまうのだ。
普通なら気づくことなのだが、今はこんなにお祭り状態となっているのだ。
そう簡単に気づくはずがない。
「とりあえず、速くいい席を確保しなきゃな!!」
「おう!今行くぜ、MAKOちゃ〜ん!!」
吉行は、張り切った様子で、門をくぐる。
見失わないように、健太達も足を速めてついていく。
その時。
「こちらの整理券をお持ちください」
「あ、ありがとうございます」
係員の人から、数字が書かれた紙を受け取った。
順番通りになっているわけではないらしく、前と後ろとでは、20ほど数が違っていた。
「おおおおおおおおおおお!!!!」
吉行は、凄い勢いで進んでいく。
が。
「ゼェゼェゼェゼェ……」
「結局、吉行が頑張ってもこの位置か……」
「現実って悲しいね」
健太と由美は、それぞれそんなことを呟いていた。
「まっ、頑張った方だと思うぞ」
「あ、ありがと、よ……ゼェゼェ」
息を切らしている吉行。
「強運スキルを持つ吉行も、たまにはこういうこともあるのね」
「強運スキル……?なにそれ」
夕夏が思わずそう呟いたが、美奈はそれをうまく受け流した。
「まっ。あとはマコが出るまで待ってるしかないわね」
ミサがそう呟いたところで、
「ところで、気になることがあるんだけど」
健太がそう話を切り出す。
「何?健太君」
かなえが健太の目を見て尋ねる。
その時。
二人の脳裏には、いつしかの文化祭での出来事が、思い出された。
その為か、自然と二人の顔が赤くなる。
「おい、どした?」
そこに、現実に引き戻すかのように、吉行の声が健太の耳に届く。
「あ、いや、この整理券って、何を意味するのかな〜て」
そう言うと、健太は持っていた整理券を見せる。
番号は、『153』と書いてあった。
「これはな、野外コンサート限定のもので、後で番号が一つだけ呼ばれるから、その為のものだよ」
「番号が当たると、どうなるの?」
今度は夕夏が尋ねる。
「まぁ、壇上に上がって、MAKOちゃんと握手することが出来たり、プレミアものの限定品を手に入れたり……」
「……よほどの幸運の持ち主じゃないと当たらないよね」
由美がそう呟いた。
「だな」
吉行はその言葉に頷く。
「さて。説明は以上ってところかな。あとは待つばかりだ」
吉行のその言葉と共に、いつの間にか『MAKO』コールが始まっていた。
ちなみに、整理券の番号は、吉行が『428』、かなえが『299』、美奈が『450』、大貴が『645』、夕夏が『609』と言うものであった。
ちなみに、大地て由美は、幽霊であるために整理券は受け取っていない。
マコは、舞台裏でスタンバイしているところだった。
その顔は、今までのコンサートでは見せなかった、心からの笑顔。
見る者を幸せにするような、そんな笑顔だった。
「マコちゃん、最近笑顔がとてもよくなったよね」
「そうかな?……ありがと」
少し照れた様子で、マコは答える。
「やっぱり笑顔が一番よ。幸せを呼ぶことが出来る一番の魔法だもの……噂の彼と再会できて、本当によかったわね」
「うん!」
マコは、もう一度心からの笑顔を見せて答えた。
「それじゃあ、そろそろスタンバイよろしくね、『MAKO』」
「はい!」
MAKOは、心の準備をして、所定の位置につく。
外からは、自らの名前を呼ぶ声が聞こえる。
その声達に答えるように、MAKOはステージに立った。
次回でこの話も終わりです。