その13 オリエンテーション旅行 1番目
やっとオリエンテーション旅行スタートです。
この話、個人的に結構好きなので。
しかし、前回登場した美咲の出番はまったくなし。
もちろん、瑞穂もです。
とても爽やかな朝だった。
太陽がちょうどよい位置に出ていて、適度に暖かい。
そんな時間に健太は起きた。
かなえも同じような時間に起きた。
他の人達も、恐らく同じくらいの時間に起きた。
同じような時間に食事をし、同じような時間に着替えを済ませて、同じような時間に顔を洗い
歯を磨き、
同じような時間に家を出たと思う。
ここまで息が合っていることなど、全員知らないわけなのだが。
健太は、嫌がる美咲をあやしてから自宅を出る。
歩いて集合場所である東京駅へと向かう。
相馬高校は、東京駅から徒歩5分という場所にあるので、学校に合わせて引っ越してきた
アパートから東京駅も、意外と近かったりもするのである。
「いよいよだな〜」
健太は、肩に大荷物を担ぎ、道を歩きながらそう呟いた。
すると、
「おす!健太!!」
後ろから吉行が健太を呼ぶ声がした。
「吉行か、おはよう」
吉行も、健太同様に右肩に大荷物を担いでいた。
「何せ3泊4日だからね」
「あっちの学校の人との禁断な恋とかもあったりしてな」
「そんなわけないだろ〜」
吉行の冗談をあっさりと返す健太。
そんな健太を見て、吉行は少しムッとしたのだが、健太は気づくはずもなかった。
「ところで、いくらなんでも多すぎると思うのは、気のせいかな?」
吉行のかばんの、異常なまでの膨れぷりを見てそう尋ねてみた。すると、吉行はいきなり声を
張り上げてこう言った。
「いいや、気のせいではない!!」
「威張って言うなよ」
「このバックには、つい先日買ったばかりのノートパソコン一台が入っているのだ!ちなみ
に、メーカーは富士○のなんだがな」
「中古のパソコンなんだ。で、それを何に使うの?」
健太がまた尋ねると、今度は空に向かって右手人差し指を、
(ビシッ)
と指して、
「それはもちろん、オンラインゲームをするためなのだ!!」
ワッハッハと大声を上げて吉行はそう言った。
そんな吉行に健太は、
「……先行ってるね」
呆れて先に行くことにした。
「おいちょっと待て健太。お前から聞いてきたんだろーが!」
「じゃあ聞くけど、ケーブルはあるの?」
「あ……」
どうやら吉行は通信ケーブルを買い忘れてしまったらしい。
「じゃあ無理だね。あきらめな」
現実を突きつけられて、絶望的な顔になった吉行だったが、
「フフフフフ、アーハッハッハッハッハー!!」
突如、大声で笑い出す。
「な、何!?」
突然のことで健太はびっくりした。
「そういうことを想定して、なんと!リト○スを持ってきてあるのだ!!」
「……また著作権を気にするような発言を」
健太は、一言そう呟いてその場を後にしたのだった。