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番外編その8 幽霊騒動 4番目

次回で番外編も終わり。

健太とかなえの二人は、階段を利用して下の階に降りて来た。

だが、そこには人らしい人はまったくと言っていいほどいない。

つまりは、お化け屋敷におけるルートから外れてしまっていることを指していた。


「ここ、ルートから外れてるみたい……」

「たぶん、前の事件のことを考慮して、だと思う」


健太達がここに降りてくる際、立入禁止の札が掛けられてあった。

そこをあえて、健太とかなえは降りて来たのである。


「本当に、降りてきてよかったのかな……?」

「後で怒られるかもしれないけど、気になることは確かめるしかないよ」


健太とかなえは、前へ進む。

一歩、また一歩。

歩く度に床が軋む音が聞こえる。

辺りには光がなく、頼りになるのは、入る時に受付の人に渡された懐中電灯の光のみ。

今、ここら辺一帯は、確実に心霊スポットと化していた。


「何か、不気味……」



(ギュッ)



自然と、かなえは健太の制服を掴んでいた。

いくらマコとかより怖がりではないにしても、女子にとって怖いものは怖い。

中には、美奈のように本当に平気な人もいるのだが……。

その時。


「……?」


何かが聞こえてきたような気がした。


「ど、どうしたの?健太君」

「……泣いてる」

「え?」


健太に聞こえてきた声は、泣き声だった。


「女の子が、泣いてるような声が聞こえる」

「で、でも、確かここは立入禁止だから、私達以外に人はいないはず……」


そう。

通常ならば、こんなところに人がいるはずがないのだ。

通常なら(・・・・)の話だが。


「……行ってみよう」


健太はかなえにそう言うと、決意を秘めたような表情を見せて、前に進む。

かなえも、その横をついていく。


「「……」」


両者の間で、しばしの沈黙の時間が流れる。

歩いているうちに、泣き声はどんどん近づいてくる。

やがてその声に混じるように、男子の声も聞こえるようになった。


「ほら……くなっ……しん……変わら……だから」

「……二人?」

「……みたいだね」


健太とかなえは、とある教室の前に立った。

そこには、埃が若干ながら被っているが、こう書かれたプレートがあった。

『1―B』


「あれ?ここ、僕達のクラスと同じクラスだ」

「それじゃあ、前の1―Bはここだったんだ。何て言うか、偶然?」


そんな会話をしている間も、扉の向こうからは男女二人の声が聞こえてくる。


「……入ろう」


そう告げると、健太は扉に手をかける。

そして。



(ガラッ!)



一気に開いた。


「「!!」」


そこには、若い男女が二人いた。

男子の方は、黒くて短い、田舎者の少年を思わせるような、どこか幼さが残っているような活発な印象を与えた。

一方女子の方は、肩まで届く程に長い紫色の髪で、美少女という言葉がぴったりの少女だった。

制服を着ているところから、どうやら学生らしい。

女子の方は、理由は不明だが、泣いていた。

ただ、この二人にはいくつか違和感がある。

一つは、制服が明らかに古い感じがすること。

そしてもう一つが。


「体が、透けてる……?」


体が若干透けているようにも見えるのだ。


「……初めてみた。こんなところに来てくれる人なんて」


男子の方が、目を見開いてそう言う。


「あの……どちら様で?」


健太はかしこまったように、そう尋ねた。


「私は……柊由美(ひいらぎゆみ)

「俺は山口大地(やまぐちだいち)。永遠の16歳だ!!」

「……何でだか、冗談に聞こえないのが結構きつい」


かなえは思わずそう呟いた。


「それで?お前達は?」


今度は大地が尋ねてくる。


「あっ。僕は木村健太」

「私は相沢かなえ……よろしくね」


笑顔でそう言うかなえだが、顔は若干ひきつっていた。


「まあ、それが当たり前の反応だよな……俺達は幽霊なんだし」

「……ねえ、私達、この人達と会話出来てるよ?幽霊なんかじゃないよね……?」

「……馬鹿野郎。何年も成長が進まないまま、年をとらないまま生きてく人間なんているかよ。俺達はあの日、床が抜けて、そこから落ちて死んだんだ。それをちゃんと理解しろ」

「……嫌だよ」


由美は消え入りそうな程小さな声で呟く。


「……嫌だ。私、幽霊なんかじゃない。私は生きてるもん……話せるもん。悩めるもん……泣けるもん……」

「由美……」


死を受け入れた少年と、死を受け入れきれていない少女。

両者の間には、隔たりがないようで、あった。


「由美さん……だよね」

「……うん」

「確かに、君は生きて(・・・)いる。けど、それは人間としてじゃない……幽霊として」

「違う!幽霊じゃない!!私はまだ人間だもん!!」


主張する由美に対して、健太は言った。


「……幽霊と人間、どう違うのかな?」

「……え?」


これには、思わず疑問の声を出す他なかった。

そんな由美などお構い無しに、健太は続ける。


「確かに由美さんは幽霊だ。けど由美さんは人間だと主張する……そんなの関係ないんじゃないかな?」


つまり、生きているのだから、どのような立場なのか関係ないのではないか?

健太の考えを要約すると、そういう意味に捉えられた。


「君は何故幽霊は嫌なの?」

「……だって、嫌われてる存在だから」

「少なくとも、僕は、いや、僕達は嫌ったりなんかしないよ」


健太は更に言葉を繋ぐ。


























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