番外編その7 幽霊騒動 3番目
後二話くらい続くかな〜。
(コツコツ)
歩く音が、校内に響く。
遠くの方では、驚かされたのだろうか、叫び声が響いてきた。
「……すげぇ迫力」
「でしょうね。このお化け屋敷は、本当に精密に作られてるわ」
「……お前、少しはお化けとか出てきて驚いたりしないのか?」
「あなたが驚いてるんだから、それで十分でしょ」
「……ごもっとも」
吉行に、反論の余地はなかった。
それもそのはずで、先ほどから吉行は、幽霊役の人が出てくるたびに驚きまくっているからだ。
「男でしょ?あなた……もう少ししゃきっとしなさいよ。いじる気も失せたわ」
「うっせぇな」
すねる吉行。
そんな反応を見て、美奈は含むような笑いを見せる。
「ところでよ、さっきの話……本当なのか?」
「さっきの話?ああ、あの怪談話?本当の話らしいわよ」
「マジで……俺、大丈夫かな?」
「大丈夫でしょ。いざとなったら、裏の力が働くじゃない」
「何だよ、裏の力って……」
美奈の言葉に、吉行は呆れかえる。
そうすると、またもや影からお化けが。
「うひゃあああああああああああああああああああああああ!!」
「……駄目ね、これ」
美奈は、吉行の驚きっぷりを見て、そう呟いていた。
「今頃どうしてるかね、あの二人は……」
そう言って、天井を見上げた。
その時だった。
「!!足が……天井から生えてる?」
そう。
天井から足が生えているようにみえた。
だが、実際にはそんなことは起きるはずがない。
「……ということは、演出の一つかしら?」
それにしては不自然すぎる、と美奈は思った。
ここまで凝った仕掛けが、文化祭で出来るようなものなのだろうか?
そう考えた美奈は、
「……面白そうね」
笑いながら、そう呟いた。
一方、こちらは健太とかなえのペア。
「まぁ、それにしてもよくもまぁここまで凝ったお化け屋敷を作ったものだね……」
「そうだね……ちょっと怖いかも」
かなえは、マコや吉行程ではないが、それなりに怖がっている様子だった。
そんな様子を見て、健太は、
「大丈夫だよ。僕がついてるから」
と言ってあげる。
すると。
「う、うん……ありがとう」
顔を赤くして、かなえは呟いた。
ちょうどその時。
「……!!これ、もしかして……」
「……穴だ」
人二人分はありそうな穴が、健太達の目の前にあった。
「もしかして、これ、さっき美奈さんが言ってた話に出て来た……」
「たぶん、そうだと思う……再現ってわけじゃなさそう、だよね」
かなえの体が若干震えだす。
「……行ってみよう。多分、この下の階に落ちたんだと思う。彼らが最後にどのような光景を
見たのか。僕達で確かめてこよう」
「……でも、そんなことする必要、あるの?」
「う〜ん、特になさそうだけど……行くだけ無駄ではないと思うから」
健太も、なぜ自分がここまで執着するのかの理由が分からなかった。
しかし、行かなければならないような義務感に襲われたのだ。
「とにかく……行ってみよう」
「……うん」
かなえも、小さく頷いた。
だが、後々この判断は間違いだったんだろう、と健太とかなえは思った。