その142 再会 4番目
「「お帰りなさいませ、お嬢様」」
健太達が出迎えたのは、何とかなえ達であった。
ただ、一人見知らぬ女子の顔を覗くことが出来た。
そして、何故かマコが疲れ切った顔をしている。
「(誰だろう?この人。それに、どうしてマコは疲れ切ってるんだろう?)」
頭の中でそんなことを考えながら、そんな考えを口にすることなく、応対をする。
「何名様でしょうか?」
吉行がかなえ達に尋ねる。
「5名様よ。案内なさい」
「(こいつ……!)か、かしこまりました」
若干顔をひきつらせて、吉行は5人を案内する。
最大6人まで座れるようにしてあったので、5人の客が来たとしても、あと一人分は席が
空くのだ。
「それでは、ご注文の方を、お嬢様方」
大分慣れているらしく、健太は見事な執事っぷりを発揮していた。
そんな健太に対して、かなえ達は軽いものを注文する。
「畏まりました。しばらくお待ちください」
颯爽とその場を去って行った健太に対する視線は、とても熱い物だった。
偶然店内にいた女子生徒達の視線をすべて奪っていったような感じだ。
「やっぱりすげぇな……健太の奴って」
別の所で注文を取っていた吉行が、思わずそう呟いていた。
「ここが……あなた達のクラスの」
「そうよ。1−B執事喫茶。けど、本当なら昨日来た方がよかったのよね」
「え?」
美奈の言葉に、咲は疑問の言葉を発した。
そのことを説明するように、かなえは話した。
「このクラスの出し物は、昨日と今日で違うのよ……つまり、日替わりってこと」
「なるほど……それで、昨日はどんなことを?」
「メイド喫茶」
即効でマコがそう答えた為に、思わず咲は吹き出してしまった。
「ちょっ……メイド喫茶!?今日は執事喫茶で、昨日はメイド喫茶!?」
「そうよ?何か言いたいことでも?」
「あ、いや……何でもない(何なの?このクラスは)」
咲は、思わず心の中でそう呟いていた。
ちょうどその時。
(ガラッ)
新たなる客が入ってきた。
健太は、出迎えに行く。
「お帰りなさいませ、お嬢様……って、ミサさん?」
最初に入ってきたのは、ミサだった。
「ちょうど時間もいいところだったからね……もうすぐシフト交代でしょ?その前に、拝んでおきたかったのよ」
「そ、そうだったんだ」
健太は、若干ひきつったような笑みを浮かべながら、そう答えた。
「ほら。早く案内を」
「あれ?佐伯さんも一緒だったの?」
健太は、意外そうな顔をしてそう言った。
「何よ?私がミサと一緒にいることが、そんなにおかしいのかしら?」
「いや、そんなことないよ……むしろ、嬉しいというか」
少なくとも、クラスメイトの一人でも、心の壁を作ることなく話せるような相手が夕夏にも出来たことを、健太は嬉しく思っていた。
「それでは、二名様でよろしいでしょうか?」
「いや、三名よ」
「?後一名様は、どちらに?」
「今ちょっとトイレに……あっ、きたきた」
後ろの方から、慌ただしい足音をたてて、もう一人がやってくる。
緑色の髪を揺らしながらやって来た彼女は、どこかで見覚えのある人物だと健太は思った。
「……もしかして、球技大会で私を助けてくれた……」
「ん?球技大会?……ああ!」
どうやら思い出したようだ。
「覚えてるかしら?私、尾崎早織だけど」
「うん!覚えてるよ。尾崎さん」
「そういうあなたは……木村健太、でよかったよね?」
以前球技大会の時に、ファールボールが少女の所に飛んできた。
健太はその少女を助けたのだが、その少女が早織だったのだ。
「まさかこんな所で会えるなんて……」
「これも、何かの縁かもしれないわね」
健太と早織は、そう言った。
「それでは、三名様ご案内致します」
健太は、三人を案内する。
途中で、かなえ達のテーブルを横切った時。
「!!」
夕夏の顔は、パッとした表情をした。
そして、言う。
「……咲?」