その138 文化祭 7番目
「しかし、何でまたフリーマーケット?」
ずっと気になっていた吉行は、とうとうそう尋ねていた。
その質問には、
「それは、単純に言っちゃうと、いらない物の処理も兼ねてるのよ」
「神内……そりゃどういうことだ?」
どこかから出て来たえりなが答えた。
その上に吉行は更に質問を重ねる。
「まぁ、文化祭ではあまりやらないことをやろうということになって、それならフリマがいい
んじゃないかということで、こうなったというわけ」
「何だか……やけに現実味あふれた企画だよね、本当に」
健太は小さくそう呟く。
「あはは……だけど、こういった物の中にも、掘り出し物が出た時って、嬉しいと思わない?」
「まぁ、それは確かにそうだね……」
「ある意味では、この企画も成功ということね」
「中川にしてはいいこと言うな……って、何冊持ってるんだよ」
見ると、美奈の手には、10〜20冊もの漫画本が握られていた。
「これは私が買うのよ。全部家で読むの」
「お前な……いくらなんでも買い過ぎだろ」
「ところで、これでいくらなの?」
健太が音羽に尋ねる。
音羽は笑顔で、
「1000円になります♪」
「お?安いな」
「はい!良心的なお値段となっております♪」
「その甲斐あってか、売り上げだけは順調に伸びてるのよね」
「元手0円だしね」
フリーマーケットなので、並んでいる商品のほとんどが、各自の家から持ってきたものである。
よって、お金はほとんどと言ってもいいほどかかってないのだ。
「まあ、俺達も何か買うか」
「そうだね。買わないなんてもったいないもの」
大貴の言葉に、マコが同意する。
他のみんなも同じ意見らしく、各自で商品を見ていた。
「う〜ん、いざ何かを買おうって時に、何を買おうか迷っちゃうね……」
「そうですね」
選んでいるかなえと美空は、そんな風なことを呟く。
「何でも大丈夫だよ〜」
「んじゃ、俺は君を……」
「「やめい!!」」
(ドゴッ!)
音羽を口説こうとした吉行に対して、健太とえりなからの突っ込みが入った。
「いつつ……冗談だってば。てか、二人からの突っ込みは正直言ってキツい……」
「だ、大丈夫ですか?」
心配そうに美空は吉行を見る。
「大丈夫だろ。今回は自業自得なわけだし」
「で、ですが……」
「……む」
そんな美空の反応を見て、えりなは一瞬そう呟いていた。
しかし、その声は誰にも聞こえてはいない。
「よしっ!それじゃあ僕はこれにしよう」
悩んだ末に健太が選んだのは、猫型の貯金箱。
「あっ!それは私が出した貯金箱!」
「これ、音羽さんのだったの?」
「うん!だから、大切に使ってね♪」
笑顔で健太にそう言った。
お金を払い、健太は貯金箱を受け取る。
「終わったか?」
その時。
ちょうど吉行達も買い終えたところだったらしく、手には袋を持っていた。
「よしっ!それじゃあ行こうぜ!」
「また明日も宜しくね〜!」
健太達が出ていく時に、音羽はそう言って健太達を見送った。
そして、文化祭も二日目に突入する。
次回より『再会』編の始まりです