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その136 文化祭 5番目

まだまだ続きます

「さぁて、どんな風に料理を運んで来てくれるのかな〜♪」

「ご機嫌だね、吉行」

「あたぼうよ!なんて言ったって、このメイド喫茶を提案したのは俺なんだからな!」


そう。

何を隠そう、この日替わり喫茶店を提案したのは吉行だったのだ。

メイド喫茶だけだと、男子が働かなくなるからいや。

執事喫茶だと、女子が入り浸りになるからいや。

よって、一日目と二日目で分けてしまおう、ということになったのだ。

このアイデアを思いついた吉行も、かなりのものだろう。


「まぁ、お前の意見を突きとおす為の物でもあったんだろうな」

「失敬な!双方共に有利になるように考えた結果だ!」

「よだれよだれ」


そうはいいつつも、吉行の口元からはよだれが垂れていた。


「ああ……人はこうやって駄目になっていくんだろうな」


そのことを大貴が悟ったちょうどその時。


「お、お待たせいたしました!」

「……むっ!この少し恥ずかしがるような態度……GJ!」


何故か健太達の所には、先ほど注文を聞いたマコではなく、顔を少し赤くしているかなえの姿

があった。


「かなえさん……凄く可愛いと思うよ」

「え!」


健太のその一言に、かなえの頭からは軽く湯気が出ているようにも思えた。


「そ、それではゆっくりお休みになってください、ご、ご主人様……」



(ダッ!)



お盆で顔を隠しつつ、かなえは厨房へと消えていった。


「あれだ……あれこそが、も……」

「言わせねぇよ!」


珍しく大貴が突っ込んだ。


「それにしても……本当に可愛かったな!さっきの相沢!」

「吉行……ハイテンションだね。さっきよりも」


更にテンションが高くなった吉行に、健太はそう言葉を発す意外にやるべきことがなかった。

大貴に至っては、あきれ顔で見ている。


「今の子、かなりきてたにゃりよ」

「ああ……心奪われたでござる」

「はぅ〜おもちかえり〜!!」

「「「……」」」


三人は、入り口前に出来ていた行列の中で見た、あの危険な人達の姿を発見してしまった。


「……あいつら、絶対追い出した方がいいって」

「……だな」


吉行と大貴は、この部分にて意見が合った。


「けど、お客様を追い出すようなことは、僕達には出来ないよ」


健太の言うことも事実であり、お金を払ってまで来てくれた人達を追い出すような無粋な真似が、彼女達に出来るはずがなかった。

なので、いずれこんなことも起きてしまうわけで……。



(バシャッ)



「あ〜冷たっ!」

「も、申し訳ございません!」

「……アイツらだ」


何が零れるような音と大貴の呟きに気付き、健太と吉行も同じ方向を見る。

するとそこには、先程の危ない人達にひたすら謝り続けている、美空の姿があった。


「あのメガネをかけた太ってる奴が……わざと足を引っかけたんだ」

「何!?」


端から見れば、かなり古典的な罠に違いないだろう。

しかし、いつもとは違う格好で仕事をしている彼女達は、そういったことに気付けないのもまた事実であった。


「アイツら……」



(ガタッ)



突如吉行は立ち上がり、彼らの元へと向かう。

健太の制止する声など耳に入るはずがなく、吉行はメガネの男に言った。


「おい、デブメガネ。テメェが足ひっかけてわざと転ばしたことくらい分かってるんだよ。何調子のってんだ?テメェ」

「うん?ただ偶然伸ばした足がひっかかっただけでござるよ」


あくまでしらを切る男に対して、吉行はキレた。


「ふざけるな!お前なんか……ぶん殴ってやる!」


吉行は、メガネの男に殴りかかろうとする。

それを見越してか、男も殴りかかろうとしていた。


「吉行!殴るな!!」

「!!」


その声に気付き、吉行は殴る手を止める。

不審に思いながらも、男はそのまま吉行を殴った。



(ドゴッ!)



「ぐふっ……」

「だ、大丈夫ですか!?」


心配そうに吉行を見る美空。


「……まさか」


男は、吉行の行った行為の意味に気付き、顔を青くした。


「……これで、正当防衛成立、ですね?」


そこには、普段は決して見せることのない、背景に鬼が見えそうな健太がいた。















その後、彼らの行方を知る者はいなかった……。
















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