その132 文化祭 1番目
いよいよ相馬学園も文化祭に突入です。
まずはその準備段階から。
秋も深まり、いよいよ木々がその葉を紅葉させ始めていた。
赤に黄色に茶……様々な色の絵の具が、自然というキャンパスを彩っている。
そんな秋の実感をさせてくれそうなこの日。
私立相馬学園の中は、慌ただしく何やら準備をしていた。
「違う!こっちこっち!!」
「オ〜ライ〜オ〜ライ〜」
いつもは何の飾りもされていないはずの校門は、様々な色のデコレーションが施されていて、そこにはでっかく『文化祭』という文字が書かれていた。
そう。
本日は、年に一度の文化祭。
健太達高校一年生にしてみれば、高校生活初めての文化祭なのである。
「いやぁ〜こうしてみると、本当にいつもの学校ってイメージがなくなってるな」
「そうね」
校門の外で立っている吉行と美奈は、その話題についてちょうど話をしている所だった。
「ところで、健太は何処に行ったんだ?」
吉行が美奈に尋ねる。
「さぁ……生徒会じゃないの?」
「成る程」
この時期の生徒会というのは、結構忙しい……いや、それは準備段階での話だ。
実は、当日の仕事というのは、これといってない。
つまり、生徒会としての仕事は、本日はないのだ。
その代わり、そのツケは始まる前と終わった後に回って来るのだが。
「アイツも大変だな……いろいろ」
「それはどうかしら?」
「何でそんな顔しながら言うんだよ」
何か含むような顔をしながら言う美奈に対して、吉行はそう突っ込んだ。
「さて……そろそろ教室に戻るか」
「そうね」
実は、前日までにある程度のことは済ませてあったのだが、完璧というわけではない。
最終調整がまだ残っているのだ。
そんな中、吉行と美奈は、外で校門の様子等を眺めていたのだ。
「さて、今日はどれだけの人がやって来るのかな?」
そんなことを呟きながら、吉行と美奈は教室へと向かった。
同時刻。
生徒会室では、文化祭に向けての最後の会議が行われていた。
「我が生徒会は、文化祭当日の仕事は存在しない。そういうわけだから、本日、明日は生徒会としての仕事はない」
「なら、クラスの仕事等をしてもいい、ということですか?」
充にそう尋ねたのは、音羽だった。
「ああ。そういうことになるな」
事務的態度で、充は答えた。
「何か意見のある者はいるか?いなければ、これで会議を終了する」
いないようなので、これで会議は終了となった。
「というわけで……行こうか、瑞……」
「お断りします」
丁重に、だが確実に瑞穂は断った。
「……こんな情景もいつも通りだね」
「……そうだね」
何がともあれ、様々な想いが詰まった文化祭が、その幕を開けた。