その12 妹の来訪 4番目
『妹の来訪』編終了です。
次からはいよいよオリエンテーション旅行が始まります。
「始めていくな。お前の住むアパート」
「そうだね。一人暮らしを始めて以来、誰かを呼ぶのは初めてだからね」
会話をしながら、アパートに向かう二人。
そうしている間にも。
「お、ようやっと到着だな」
「……本当にここまで着いてくるとは」
健太の住むアパートに着いた。
「まぁな。俺は言ったことは最後までやり通すタイプだからな」
「こんなことまでやり通されても困るけど……」
呆れながら、健太は言った。
「まぁ何がともあれ、早く入ろうぜ!」
「言われなくても、ここ僕の部屋だから入るけどね」
健太は、自分の部屋、203号室へと入っていく。
(ガチャッ)
鍵を開けて、部屋に入る。
その時。
事件は起きた。
「お兄ちゃん!」
(ギュッ)
「うわっ!」
(ドスン)
「……」
固まった。
一体何が起こったのか分からず、健太と吉行の二人は固まってしまった。
十秒たって、ようやっと何が起こったのか理解した。
どうやら健太は、何者かに抱きつかれ、そのまま倒れたらしい。
吉行は、そんな二人の行動を、ずっと見ていたらしい。
「……もしや、美咲?」
「うん!そうだよ」
健太に抱きついてきた張本人である美咲は、嬉しそうにそう言った。
「いやぁ〜久し振りだね」
「といっても、まだ1か月もたってないけどね」
吉行の言葉に、健太はそう突っ込む。
美咲は、短めでピンク色で、双方の髪留めからピョンとはねているかのように出ている髪の毛
が特徴で、瞳は黒く、パッチリしている。
嬉しさを表現する時、その髪の毛はピョコピョコ動くというらしいが、その真偽は今の所不明。
「それにしても、早かったね。話だと確か昨日って言ってたような気がするんだけど……」
「早くお兄ちゃんに会いたくて、早く来ちゃった♪」
「うわぁ……やっぱり美咲ちゃんって可愛いな……羨ましいぞ、健太」
「何言ってるんだよ、吉行……」
呆れながら、健太は言う。
「何を言う!可愛い妹を持ちたいという願望があって何が悪い!!」
「ロリコンか!!」
健太は、美咲を守るかのような素振りを見せながら、そう突っ込んだ。
「まぁ安心しろ。美咲ちゃんに手を出してしまう程、俺はまだ落ちてない……はずだ」
「何か、最後の方が自信なさそうだけど」
「?」
美咲は、健太と吉行の会話を、不思議そうに眺めていた。
「さて、それじゃあそろそろ俺は帰ろうかな」
(スクッ)
「あれ?今日は家でゲームして行くんじゃなかったの?」
「ま、久しぶりの兄妹水入らずの会話に、油をさすわけにもいかないからな。じゃあな、健太。
また学校でな」
「うん、また明日」
「美咲ちゃんも、また会おうな」
「はい♪」
「うおっ!さすが美咲ちゃん。その笑顔、反則、だぜ……」
「なんでもいいけど、帰るなら早く帰った方がいいと思うけど」
「意外と冷たいな」
健太がそう言い放つと、吉行は帰って行った。
「……さて、夕食でも食べる?」
「そうだね。今日は私が作るよ」
「そう?なら、今日は任せちゃおうかな?」
「任せてよ!」
久し振りの兄妹での夕食を満喫した後、健太と美咲は寝た。
そして五日後。
オリエンテーションの日がやって来た。
次回は人物紹介のコーナーです。
といっても、今度も紹介する人物は一人のみですが。