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その127 説得 6番目

「……私は、今まで一人でも生きていけた」


夕夏はポツリと呟く。

それに対して、言葉を返すのは無粋だと思ったのか、誰もその言葉に返事をする者はいない。


「一人でも、別に寂しくなんかないって思ってた……けど、辛かった。本当は、一人でいる

 ことは、辛かったの」

「……」

「だから……私は……」


ここで夕夏は一拍置く。


「……けど、私なんかで、いいの?」


その夕夏の問いに、


「うん。もちろん!」


健太は笑顔で頷く。


「私、こんな性格してるのよ?」

「性格なんて、個性なんだから別にいいと思うけど」

「暴力振るうような女だよ?」

「でもそれは本当に必要な時だけしか使わないでしょ?」


夕夏の言葉一つ一つに、健太は答えていく。

段々と、夕夏と健太達挟まっていた固い壁が、取り壊されていく。


「今まで拒絶してきたのよ?酷い言葉も言ってしまった」

「そんなの今となってはどうでもいいよ」


夕夏の不安を、一つ一つ取り除いていくように、健太は答えていく。


「私……友達をつくってもいいの?」


夕夏からの最後の質問にも、やはり健太は笑顔で答えた。


「もちろん!」


この答えを聞いた夕夏は、やがて意を決した顔つきをして、


「……フゥ」


一拍置いて、言った。


「もし良かったら……私と、友達になって……くださいます?」


その質問に、健太達はそれぞれの言葉で答えた。


「当たり前だろ?」

「こちらこそよろしくね」

「ボクは嬉しいよ!」

「私と友達やるなら、覚悟しときなさいよ?」

「お前は黙ってろ……まぁ、よろしくな」

「これからもよろしくね、夕夏!」

「夕、夏……」


ミサがその名前を口にした時、夕夏は一瞬、懐かしそうな顔をして、


「……あなた、咲とそっくり。とってもいい人だと思いますわ」

「そう?ありがと。後、私のことはミサって呼んで」


ミサは、夕夏にそう呼ぶように要求する。


「……わかった、ミサ」


夕夏は、ミサの名前を口にする。

その瞬間、ミサの顔が更に明るくなった。

そして最後に。


「……佐伯さん」


健太は、夕夏に、


「これからは僕達、友達同士だね」

「……最後に一つだけ、聞いてもいいかしら?」

「何?」


夕夏は、前から思っていた疑問を、健太に尋ねた。


「……どうして、私なんかと友達になろうなんて思ったの?」


その問いを聞いた健太は、やはり笑顔でそう言った。















「友達になるのに、理由なんているの?」















「!!」


その言葉が、夕夏の持っていた不安を、すべて取り除いた。


「結局の所、友達になるのに、深い理由なんていらないんだと思う。同情なんかじゃない、何か裏のある関係を築きたいわけじゃない」


そこまで言ってから、一旦間を置いて、


「ただ、理由があるとするなら、ただ友達になりたかったから……じゃ駄目なのかな?」

「……とっても素敵な理由だと思いますわよ。それだけ他人のことを考えられるってことですからね……健太は」

「ありがとう、夕夏さん」

「……!!」


いきなり名前で呼ばれるとは思っていなかった夕夏は、戸惑いを隠せない。

周りにいた女子達の多くは、またライバルが一人増えたことを、密かに悟った。


「それじゃあ……お祝いをするわよ!」


美奈は、右手を上げて言う。


「今はまだ授業があるだろ。それは後にしろ」


大貴は美奈にそう言った。


「じゃあ、せめてこれだけでも言わせなさい!」


気持ち前に出て、美奈は言った。


「改めて言わせてもらうわ。1―Bへようこそ!!」
















説得編はこれで終わりです。

次回は登場人物紹介です。

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