その125 説得 4番目
今回は、意外な展開が待っています。
「あ、夕夏じゃ〜ん!」
噂話をしていた女子生徒の内の一人が、夕夏の名前を口にする。
夕夏は、それを拒絶するかのように、
「あんたなんかが、私の名前を気安く呼ぶな!」
夕夏は吠えた。
「咲……一体これ、どういうことなの?」
「あ〜その、えっと……」
咲は、どう説明しようかと、目線をさまよわせながら考えている。
咲が答える前に。
「咲はね、あんたと友達同士でいたことは、演技だったって言いたいのよ、分かる?」
「つか、どうせ廊下で聞いてたんだろうから、分かるわよね?」
「……嘘よ」
「そんなわけないじゃない。全部本当のことなのよ」
嫌みたらしく女子のメンバーの一人が言うと、周りの女子は釣られて笑う。
ただ、咲だけは笑っていなかった。
だが、そのことに夕夏は気づいてなかった。
「あんたさ、金持ちで、言いたくないけど顔も良くてさ、そのくせ調子乗ってさ」
「うざったらしいんだよね〜」
「「「アハハハハ」」」
「……ふざけないでよ」
夕夏は小さく呟くが、そんな声など届くはずもない。
そんな空気をぶち破ろうと、咲が何かを言おうとしたその時。
「ふざけんな、このバカ野郎共がぁああ!!!!」
夕夏は、ついに最大限の声で吠えていた。
これには、笑っていた女子達も、笑うのをやめた。
そんな様子を、咲は無機質な表情を浮かべて見つめていた。
「テメェらみたいな社会の屑何かに、私のことをとやかく言う資格なんかねぇんだよこのカスが!!」
「ああん?何粋がっちゃってるんですか、お嬢様ぁ?」
一人の女子がそう言ってきたその時。
(バキッ!)
女子とは思えないような力で、夕夏はその頬を殴っていた。
「……何すんのよ、このアマァッ!!」
血が昇った女子達が、椅子を夕夏に向かって投げつける。
それを夕夏は難なくやり過ごすと、そのまま勢いを殺さず、一人一人確実に殴りつけた。
「い、痛い!!」
あまりの激痛に、そんな声も聞こえてくる。
しかし、夕夏はそんな声など聞こえないと言ったような感じで、攻撃の手を止めない。
「……止めてよ」
今度は咲が呟く。
聞こえていないことを悟った咲は、
「止めてよ!!!!」
声を荒げてそう言った。
その声に反応するかの如く、夕夏は手を止めた。
「……咲、あなたとはいい友達になれるとは思ったのに……」
「違う、違うのよ、夕夏。これは」
そう言って、夕夏に手を伸ばそうとする咲。
しかし。
(パンッ!)
「!!」
分かりやすい形での、拒絶。
夕夏は、咲と友達であったことを、全て否定したのだ。
「今日からあなたと私とでは、完全に赤の他人よ。学校で会っても、話かけないで頂戴」
咲にそう言うと、今度は痛さのあまりに蹲っている女子達に向いて、言った。
「次私に反抗してきたら、私が持つ最大限の力で、社会的にも精神的にもこの世から抹殺する。いいわね?」
「「「は、はい……」」」
先ほどまでの勢いなど、最早残っていなかった。
それを吐き捨てた夕夏は、教室の扉を開け、そのまま出ていった。