その121 生徒会の人々 5番目
今回の話で、「生徒会の人々」編は終わりです。
放課後。
部活を終えて、帰り道を歩く健太は、いつものように『沢渡橋』までかなえと歩いて帰り、
ちょうど別れた所だった。
あの日以来、かなえと健太は、部活がある日は毎回、こうして二人で帰っているのだった。
「ん?」
その道で、ふと見知った人影を発見する。
「あれは……音羽さん?」
暗くてあまりよくは見えなかったが、その姿はまさしく音羽の物だった。
「こんな時間まで生徒会だったのかな……?今度、僕も放課後に生徒会に行ってみよう」
そう呟くと、健太は音羽の元まで近寄る。
そして。
「音羽さん」
その名前を呼んだ。
「あっ、健太君!」
音羽は嬉しそうに健太の名前を呼んだ。
「奇遇だね!こんな所で会うなんて」
「そうだね……家はこっちの方なの?」
「うん!」
どうやら音羽も、健太と同じ方向に家があるらしい。
なので、二人は途中まで一緒に帰ることにした。
「どうですか?生徒会は」
「う〜ん、思っていたより、やりがいがあって、楽しそうだよ。メンバーもいい人ばかりが
集まってるしね」
「よかった〜。そう言ってくれると、私としてはとてもうれしいかな」
言葉通り嬉しさを表現する音羽。
「それにしても、どうして音羽さんは生徒会に入ったの?」
健太は、音羽にそう尋ねる。
すると。
「私は、歩美先輩に誘われて入ったの。何でも、デスクワークが出来る人を探してたとか……」
「そう言えば、僕が生徒会室に入った時も、パソコンで何か打ってたね。あれってもしや、
文化祭関連の物じゃないの?」
「そうだよ。文化祭についての規則を、まとめてたの」
「へぇ〜」
文化祭が近づく中、健太は生徒会という新たなる環境に出会った。
しかし、健太を取り巻く問題は、未だひとつだけ解決していなかった。
「ところで、佐伯夕夏さんって知らない?」
「佐伯さんって……確かこの前転入してきた人ですよね?」
「うん……なんだか、周りの人との交流を避けようとするんだよね。音羽さんはどう思う?」
聞いたところで何の解決にも至らないと思ったが。
健太は音羽にそう尋ねてみる。
すると。
「……昔、友人に裏切られたんじゃないかな?多分だけど……」
「昔、裏切られたことがある、か……それじゃあ佐伯さんは、裏切られるのが怖くて……」
「多分……人に裏切られるのって、とても怖いことだから」
少し暗い顔をして、音羽は呟く。
「どうしたの?音羽さん」
「ううん、なんでもない。ただ……」
「ただ?」
音羽はそこで一旦言葉を区切ると、一呼吸置いて、言った。
「もし私が誰かに裏切られたとしたら、私ならしばらくの間は『友達』を作ることを拒絶する
と思うの。だから、佐伯さんも、今はそんな状態なんじゃないかな」
「……そっか。ありがと、音羽さん」
健太は、音羽にそうお礼を言った。
「い、いや私、お礼されるようなこと、言ってないけど……」
「ううん。僕が今やるべきこと、見つかったんだ。それは、音羽さんのおかげだよ」
「あ……」
音羽の顔が、少し赤くなる。
「それじゃあ僕はこっちの道だから。また明日学校で会おうね!」
「あ、うん……またね、健太君!」
手を振りながら言う音羽に対して、健太も笑顔で手を振り返す。
「……健太君」
音羽は、健太の名前を口にする。
「……なんだろう、この胸の高鳴りは。出会ってまだ数日なのに、胸が、ドキドキする……」
自らの心臓に手を当てて、その音を確かめる。
力強く、バクンバクンと音を鳴らすそれは、音羽の今の心情を表しているかのようだった。
「それにしても、佐伯さん、全然人と関わろうとしないなんて……」
何かを思い出すかのような口ぶりで、音羽はこう繋いだ。
「……生徒会に入る前の、私みたい」
次回は、登場人物紹介といきますか。