その115 新たなる日常 4番目
学校からの投稿です。
バレたらやばい。
「……」
トイレに入り、夕夏は鏡を睨み付ける。
気になるのは、先ほど健太が言っていた言葉。
「……『友達』、か」
夕夏には、この学校に入って、未だ友達と呼べるような人物とは出会っていない。
何故なら、それは夕夏自身が望んでこの状況をつくりあげているからだ。
だが、夕夏にも実は友達はいたのだ。
しかし、その関係は、ある日崩れ去った。
「友達なんて……そんなの嘘よ」
夕夏は、孤独であることを選んだ。
周囲の色と交わることのない、黒であることを選んだのだ。
「……どうせまた、裏切られるに決まってる」
呟くと、夕夏はトイレを出た。
「んで、結局実行委員は健太と相沢がやることになったのか」
「というか、何故か女子のやる気が強かったような……」
「……鈍感」
美奈はそう呟いたが、健太の耳には入っていない。
「そして、ボク達は二人のお手伝いってわけだね」
マコは元気そうに言った。
「明日辺りには、何をやるか決めちゃいたいって思うんだ。なにやりたいか考えておいてね」
「わかったぜ、健太!」
爽やかそうに、吉行は言ったが、別にそこまで爽やかでないのは目に見えていた。
「ところで」
「何?ミサさん」
ミサが健太に尋ねる。
「あの子はどうするのよ?」
「あの子って……佐伯さん?」
健太は、夕夏の方を見ながら言った。
「今はまだそっとしておこう。けどもう少し経ったら、聞いてみようと思う」
「みんなでやってこその文化祭だからね」
かなえは健太の言葉に続くように言った。
「……孤独の辛さを知ってる健太にとって、今の佐伯の姿は見るに耐えられないんだな」
「……」
健太は、言葉を呑み込んだ。
「とにかく、今は文化祭実行委員としての仕事を全うすることだな」
「……他人事だと思って」
「実際そうだしな」
大貴は、若干嬉しそうにそう言った。
「他人事じゃないよ。ボク達みんなの問題だよ、大貴君」
「え?」
マコの言葉に、大貴は驚く。
「そうね。ここにいる私達全員で、二人のサポートをするんだものね。当然、あなたも協力しなさいよ」
「……分かったよ」
大貴は、面倒臭そうに返事をした。
「まっ。焦ってもいい結果は見られないと思うからさ。今は落ちついていればいいと思うよ」
「……焦らず、ゆっくりと、だね。文化祭までまだ時間はあるし」
健太の目標。
それは、文化祭までに夕夏と友達になること。
それを今、健太はもう一度確認したのであった。