その109 あの日の約束 6番目
昨日一昨日と、豚インフルエンザの影響で中間試験がなくなり、今日が初日。
……日曜日は楽出来ると思ったのになぁ。
何着か健太は見たが、そのどれもが愛に似合っていて、健太は感心するしかなかった。
愛が何かを着ると、輝いて見えた。
「どう?健太」
「か、可愛いと思うよ……」
「本当?それじゃあこれにしようかな〜」
愛は、健太の意見を聞いて、何着か服を選んでいた。
そのほとんどが、似合いそうな服ばかりだった。
「でも、そんなに買って、大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫♪この日の為にお金を貯めておいたんだから……って、足りない」
「ええ?」
どうやら財布の中に入っているお金だけでは、その服は支払えないようだ。
そこで、健太がこう提案した。
「……僕が足りない分を出すよ」
「え?」
それは、足りない分を健太が補うという物だった。
「それに、そのお金を全部使っちゃうと、いろいろ困ると思うよ」
「……ありがと、健太」
申し訳なさそうに愛は健太に言った。
「いいっていいって。こんなのどうでことないよ」
言いながら、二人はレジに向かう。
そして、支払いを済ませて、洋服屋を後にする。
「……行くよ、杏子ちゃん」
「うん、美咲ちゃん」
美咲と杏子の二人は、その後ろをついていくことにした。
時間はお昼時となり、健太と愛は、デパートを出て、とあるファーストフード店に来ていた。
同時に、美咲と杏子の二人もそこにやって来た。
「僕はこれにしようかな」
「私はこれ」
健太達が注文しているその隣の隣で、
「私はこれにしよう」
「じゃあ私も同じので」
と、美咲と杏子も注文をしていた。
「それでは、少々お待ちください」
店員は、注文を聞くと、奥にひっこむ。
奥では、『ハンバーガー2、コーラ・オレンジ』という声が聞こえていた。
「でも、ここでよかったの?」
健太が愛に尋ねると、
「うん。なんだかいつも行かないような場所に行っても、落ち着いて食べられないと思うし、
それに個人的に、ハンバーガー好きだから♪」
「そうなんだ」
どうやら愛は、ハンバーガーは好みのようだ。
「お待たせいたしました」
そんな会話をしていた所、店員がトレーにハンバーガーを乗せてやって来た。
ポテト・ドリンクもついている。
「ごゆっくりどうぞ」
営業スマイルを浮かばせて、健太と愛にそう言う店員。
健太達は、そのトレーを持って、上に上がって行った。
「……美咲ちゃん、私、先に行ってるね」
「……うん。席を確保しておいて」
「わかった」
何故かは知らないが、この時の美咲と杏子の息は、とてつもなく合っていたという。
杏子は、健太達の後について、上へと上がって行った。
その時に。
「お待たせいたしました」
美咲達にも、ハンバーガーが渡された。
だが。
「……二つは、持てない」
二つのトレーを渡されては、美咲には持てない。
本来なら杏子にも手伝ってもらいたい所なのだが、生憎杏子はたった今上に上がってしまった。
ということは。
「……これ、私一人で持っていかなくちゃいけないの?」
という結論に至った。
「……ご一緒しましょうか?」
「え?」
見るに見かねたのか、店員が美咲にそう言ってきた。
「……お願いします」
美咲は素直にその言葉を呑んだという。