その105 あの日の約束 2番目
まさかのあの人の登場です。
……何で出したんだろう(え)。
一通り買い物を済ませた健太達は、スーパーを出て、途中まで歩くことにした。
いろんな話をして、この日は盛り上がったという。
「それでさ、吉行ったらもう凄い暴走っぷりで……」
「あ〜、吉行君ならあり得る話だね」
「そういえば、和樹達にもこの間会ったよ」
「え?そうなの?」
健太は、遊園地で和樹達と再会した話を愛にする。
「……そういえば、健太」
「ん?何?」
突然、愛が健太に尋ねて来た。
「あのね、あの日の約束……覚えてる?」
「あの日の約束?」
言われて、健太は少し考える。
そして、
「もしかして、球技大会の日のこと?」
と、ひらめいた。
「そう!それ」
球技大会の日に健太と愛がした約束。
それは、もし愛がソフトボールの試合でホームランを打ったら、どこかへ出かけるといった
約束であった。
ただ、夏休みの日までにその約束が果たされたことはなく、そのまま流れていたのである。
「それでさ……もしよければでいいんだけど」
「うん」
「こ、今度の日曜日に、わ、わ、私と……どこかへ出かけない?」
「……うん、いいよ」
健太は少し考えて、OKした。
「やった〜!!」
愛は、かなり嬉しそうに言った。
「それで?いつにするの?」
「それじゃあ……今度の日曜日なんてどうかな?」
そう提案すると、健太は、
「うん、大丈夫だよ」
と、答えた。
「それじゃあ、今度の日曜日に駅前で会おうね」
「うん、それじゃあまたね」
約束の期日・場所を確認すると、愛はその場を後にした。
「……さて、僕もそろそろ家に帰ろうかな」
健太も、家に帰ろうとすると、
「……ん?」
健太は、その先に誰かを発見した。
その人物は、
「確か……佐伯さん、だったかな?」
本日転校してきた佐伯夕夏その人だった。
ただ、少し気になることがあるとすれば、
「……何で歩いてるんだろう?」
そう。
初登場時に乗っていた車ではなく、何故か今は、歩いていた。
ただ下校するのみなら、迎えに来てもらえばそれでいいはずなのに。
「う〜ん、どうするべきなんだろう?」
話かけるべきか。
そのまま気にせず家に帰るか。
悩んだ末に出した健太の答えは。
「……よし」
そう小さく呟くと、健太は歩き出す。
そして。
(ポンッ)
「!?」
「やぁ、佐伯さん」
健太は、夕夏の肩を叩き、そう言った。
「あなたは……確か」
「同じクラスの木村健太だよ。君は佐伯さん、だよね?」
「……」
無言で夕夏は頷く。
「それで、私に何か用でも?」
「あ、いや、単に見かけたから声をかけただけなんだけど……」
あいにくそれ以外の答えを用意していなかった健太は、そう言葉を返すしかなかった。
「……そう」
それだけを呟くと、夕夏はその場を立ち去ろうとする。
だが。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
健太は、夕夏を引き止めようとする。
しかし、夕夏はそれを軽く受け流すと、そのまま歩きだし、どこかへ行ってしまった。
「……なんだったんだろう、佐伯さん」
健太は、小さく呟いた。