その104 あの日の約束 1番目
新たな話の始まりです。
家に帰って来てから、健太は夕食の買い物をする為に街へ出ていた。
美咲が来てからの健太の家は、食事は交代制となっている。
本日は、健太が食事当番の為、買い物は健太が行くことになっているのである。
「今日は何にしようかな〜」
スーパーに入り、健太は食材を選ぶ。
どんな夕食にしようか考えながら食材を選んでいると、
「……あっ!健太!」
「その声は……愛?」
何と、偶然にも愛と出会ったのであった。
「愛も買い物に?」
「うん。ちょうど夕飯の買い物をお母さんに頼まれてた所だったんだ……」
かごの中には、今日の食事に必要な物がたくさん詰め込まれていた。
「というか、いつもこのスーパーを使ってるの?」
「いや、たまにだよ。そもそも、私が買い物に行くこと自体、あんまりないことだから」
愛自身、部活等で忙しい為、買い物に行くことは少ない。
かくいう健太も部活に入っているのだが、一年生の内は、例えレギュラーだとしても、週3の
割合で休みなので、今日はその休みの日に入っている。
ちなみに、一年生の休みの日は、火・木・日だ。
「さてここで問題です♪」
「へ?」
いきなりそう言ってきた愛に対して、健太はふ抜けた声を出してしまう。
「今日の私の家の夕食は何でしょうか?」
「ええ?えっと……」
そう尋ねられた健太は、愛の買い物かごを見る。
入っているのは、牛ひき肉・玉ねぎ・ニンジン・その他調味料が少々。
これらから結びつく食事と言えば……。
「分かった!ハンバーグだね?」
「正解〜!」
愛は笑顔でそう言った。
どうやら今日の夕食はハンバーグらしい。
「そういう健太は何を作るの?」
今度は愛が健太に尋ねる。
すると、
「実は僕も今日はハンバーグを作る予定なんだよね」
健太は、買い物かごを見せてそう言った。
愛はその中身を確認する。
その中には、愛の買い物かごに入っているのとほとんど同じようなものが入っていた。
「何だか不思議な感じだよね。こういうのって」
「偶然に偶然が重なるってやつ?似た者同士というか……」
最後の方は小さく呟く健太。
その声が聞こえなかった為か、
「え?何?」
と、愛は健太に尋ねてきた。
「何でもないよ。それより、早くこの会計を済ませちゃおうよ」
「そうだね……あっ。まだ買う物があるんだった。ちょっと付き合ってくれるかな?」
そう聞かれた健太は、
「うん。僕の分はもう買い終わってるから大丈夫だよ」
と、OKを出した。
「本当?じゃあ、こっちこっち」
と、先導するかのように前を行く愛。
その後ろを、健太はついていく。
「……何だよ、あのアツアツぶりはよ。こちとら彼女いない歴十七年だってのに」
偶然その場にやって来た男子生徒(某高校二年生)は、健太達のことを見てそう呟いていた。