その103 転入生 3番目
今回で「転入生」編は終わりです。
「なぁ健太、どう思うよ」
「……というより、まず言いたいことがあるんだけど」
健太は吉行に言った。
「どうしてまたここなのさ」
「だって、ここのが話し易いだろ、屋上」
そう。
健太と吉行は、いつもの場所である屋上に来ていた。
そして今回の話題は、
「あの転入生についての話だ」
今日入って来た転入生―――つまりは、夕夏のことだ。
「確か……佐伯さんだっけ?佐伯さんがどうかしたの?」
「何つーか、その……美人だったな」
「……まぁ、美人だったね」
先ほどの夕夏の登場シーンを思い出して、健太は呟く。
「それでいて、ツンデレ候補と来たら……男としては、このチャンスを逃すわけにはいかない
だろう?」
「いや、そんなことはないと思うよ。大体、つんでれって何なのさ」
健太は吉行にそう言葉を返す。
負けずと吉行は、
「バカ野郎!転入生だぞ、女子だぞ!これを狙わずして男なのか!?あと、ツンデレって言う
のはだな、普段はツンツンしているんだが、たまに現れるデレがポイントで……」
「ていうかその前に、佐伯さん、なんだか嫌そうな顔してたような気がするんだけど」
吉行の言葉を遮って、健太は言った。
「ん?嫌そうな顔?それはどういうことだ?」
「何というか……何かから逃げて来たような、周りとの距離を置いているというか……」
「つまりは、誰とも仲良くする気はない、ということか?」
「うん」
健太はどうやら、夕夏に対して何らかの違和感を感じていたらしい。
気の強そうな感じを出していたが、それでいて、周りとの関わりを拒絶するかのようなオーラ
を醸し出していたのだ。
「お前って、本当にいろんな意味ですげぇよ……」
「そ、そうかな?」
ちょっと照れる健太。
「けどよ、そうだとしたら、俺達が何かをすることなんて出来ねぇんじゃねぇか?」
「う〜ん、友達になることぐらい出来ると思うけど……」
「お情けでなるような友達なんて、誰も望んじゃいねぇんだよ」
吉行にしては、えらくまともな意見を述べる。
それに対して、健太は、
「そうじゃないよ。情けなんかじゃない」
「じゃあ……何だって言うんだ?」
分からないと言うような顔で、吉行は健太に尋ねる。
すると健太は、こう答えた。
「……ただ仲良くなりたいから、じゃ駄目かな?」
「……」
吉行は、そんな健太の言葉に唖然としてしまう。
「あ、あれ?何か変なこと言った?」
「……いや、本当にお前らしいなって思ってよ」
前置きを置いて、吉行は更に言葉を繋げる。
「つまりお前は、佐伯と友達になる理由が、ただ友達になりたいから、って事なんだろ?」
「そうだね」
「なら……俺も友達になるぜ!このまま健太ハーレム化計画が進んじまうことだけは避けたいしな」
「後の方で何言ってるのか分からないけど、とにかくまずは佐伯さんと話をしてみよう」
「おう!善は急げってよ!!」
「と言っても……もう放課後だけどね」
今日は始業式の為、授業自体はなく、HRだけで終わっている。
その為、残っている生徒はほとんどいなかった。
なので、そんな中で夕夏を探すのは、はっきり言って、不可能に近かった。
「……明日にしようぜ、健太」
「うん……そうだね」
健太と吉行は、今日は家に帰ることにした。
次回は登場人物紹介です。