その101 転入生 1番目
始業式です。
ちょっと話が進みます。
「であるからして……」
「かったるいな……始業式って」
「まぁまぁ。話を聞こうよ」
早くもダレている吉行に、健太はそう言う。
吉行は、先ほどまで眠っていた為か、いくらか体調はよくなっていた。
「なぁ、ところでさっきの騒ぎって何だったんだ?」
吉行が尋ねる。
その問いには、
「さっきのは、何かお嬢様が車から降りてくるという、この学校では無縁のはずの光景
だったな。何だったんだ?さっきのは」
「ま、マジで!?」
最後の方などほとんど聞かずに、吉行は反応した。
「次は、生徒会長からのお言葉です。大村会長、よろしくお願いします」
いつの間にか校長からの言葉が終わっていたらしく、生徒会長である充が立っていた。
「皆さんおはようございます。生徒会長の大村です」
充は、いつもとは違う、真面目な声でそう言った。
「それで?どんな女子だったんだよ?」
「えっと……金髪で、整った顔立ちをしてて……」
健太達は、会長の話を全く聞いていなかった。
「まっ、そんな所だな」
「う〜む。そんな感じの女子はこの学園では見たことないな……金髪で長いって言うんだったら、相沢とそっくりなんだが……」
「あの子は純和風だったぜ」
大貴の口から、そんな言葉が発せられる。
「……二学期になった今……」
「うちのクラスに転校してきてこないかな〜」
「それはないと思うけど……」
「何故に?」
吉行は健太に尋ねる。
「だって、一学期にマコが転入したばかりじゃん」
そう。
健太のクラスには、すでにマコが転入してきていたのだ。
ということは、仮に彼女が転入生であったとしても、健太達のクラスに来る確率は低いということだ。
「まっ。俺は別にいいけどな」
「二ノ宮がいるもんな」
「……殺すぞ、吉行」
殺気を漂わせて、大貴は吉行にそう宣言する。
「た、タイム!ストップ暴力、いじめ、カッコ悪いよ!!」
わけの分からない言葉を連発する吉行。
そんな時。
「お前、いい加減に黙れ」
「……はい」
外川からの言葉に、吉行は素直に従った。
「ねえ、知ってる?」
「何が?」
いきなりマコにそう尋ねられて、健太はそう答える。
「今日このクラスに、転入生が来るらしいよ。ボク、ちょっと楽しみかもな〜」
「なぬ!?転入生だと!!」
その単語に飛びついてきたのは、吉行だった。
「男か?女か!?」
「ええ?えっと……女の子って聞いてるけど……」
「いやっほう〜!ついに春が来たぜ!!」
吉行は、派手に盛り上がる。
その様子を見たマコは、
「……ねぇ、相沢さん」
「何?雛森さん」
「ボクが転入してきた時も、こんな感じだったの?」
と尋ねた。
「……うん。大体こんな感じだったよ」
かなえは、その日のことを思い出しながら、そう言った。
「それにしても、いつも以上にハイテンションな教室ね」
教室内を眺めて、ミサは言った。
「仕方ないよ。休み明けなんだし、転入生が来るんだし」
「ふっ。大体どんな子が来るかは分かってるけどね」
突如、美奈が口を挟んでくる。
「やっぱり、さっきあのでっかい高級車から降りてきた子?」
「でしょうね」
美奈がそう言ったその時。
(ガラガラ)
「お〜い、席につけお前ら」
という声と共に、外川が入ってきた。