その100 二学期
第二部始まりました。
今回の話より、私立相馬学園は二学期となります。
9月1日。
太陽の日差しが眩しくて、容赦なく突き刺してきた夏から、紅葉が目立ち初めて来る秋に移り変わったこの日。
私立相馬学園は、二学期始業式を迎えることとなった。
「いよいよ二学期だな」
校門近くで、大貴が呟く。
「そうだね」
その言葉に、健太も同意する。
そろそろこの学園に慣れて来たのか。
一年生の中でも、友人と喋りながら学園に来る者がほとんどだった。
「しかし、もう二学期なのか。夏休みが昨日で終わったなんて、まだ想像もつかないぜ」
「今年の夏休みは、結構楽しかったもんね」
健太と大貴の二人は、夏休みの思い出話をしながら、下駄箱へと向かう。
そこで、二人は彼を見た。
「うわっ!」
健太はまず、驚きの声をあげる。
次に、大貴が呆れたように、
「何してんだよ、お前」
と言った。
「て、徹夜で宿題をやったせいか、何だか、ダルいんだ……」
「……何日寝てないの?」
「一週間……」
あり得ないような眠そうな声で、吉行は言う。
そう。
健太と大貴が見た光景とは、下駄箱に寄りかかって眠りかけていた、吉行の姿だった。
「何と言うか……憐れだ」
と、大貴が呟いたその時だった。
「お、おい。あれ見ろよ」
「うわぁ、でかい車だな〜」
という、何者かの声が聞こえて来た。
「ん?外が騒がしいな。ちょっくら見てくるか」
「あっ。僕も行くよ」
「お、俺も……」
と言いながら、吉行もついていこうとしたが、二人に保健室行くようにと言われて、仕方なくそれに従うことにした。
二人は、靴を履き替えてはいなかったため、そのまま外に出る。
すると。
「……何だありゃ。デッカイ車だな」
「あっ。何かスーツ着た男の人が出て来た」
その車は、全身黒。
まるで、お金持ちが乗るような車だった。
そして、その車から出て来た人は、これまた全身黒のスーツを来た、サングラスをかけた男が二人出て来た。
「だ、誰だ?あの男達」
「……さぁ」
健太は呟く。
その時。
「おはよう、健太君、大貴君」
「おはよう、かなえさん」
「ああ、おはよう。相沢」
ちょうどかなえもやって来た。
「な、何だろう、この車」
「さあ……かなえさんも何も聞いてない?」
健太は尋ねる。
「うん。何も」
と、かなえは答えた。
そうしている内に。
(サァ〜)
男二人は、赤い絨毯を敷き終えた所だった。
「赤い絨毯?」
「な、何故?」
ますます意味が分からなくなる健太達。
すると。
(ガチャッ)
扉が開かれ、誰かが車から出てくる。
その人物は、女性だった。
金色で腰まで届くような長い髪、すらりと伸びた身長。
美人と言う言葉がよく似合う、整った顔立ち。
非の打ち所がないような容姿をしていた。
彼女は、男達が敷いていった絨毯の上を、優雅に歩いていく。
その度に、彼女の髪は、風で流されて、サラサラと動く。
「び、美人だな……」
「そうだね……」
「……髪、サラサラだなぁ」
それぞれそのような感想を持ったという。
これが彼女との、最初の出会いだった。