その96 夏と言えば 2番目
プールに行く前の会話です。
プールには次回入ります。
次の日。
いつものメンバーが揃う中、一人だけ来ていない人がいた。
「呼んだ張本人が遅れるなんて……何考えてんだ?吉行の奴」
そう。
珍しく吉行が来ていなかったのだ。
いつもなら集合時間に余裕を持ってくるだけに、珍しいことであった。
ちなみに、吉行が呼んだメンバーは、健太・大貴・かなえ・美奈・夏美の五人。
これに美咲が追加されるという感じだ。
マコも誘ったのだが、どうやら新曲の収録があるらしく、暇ではなかった。
「雛森さんも大変だよね。夏休みだというのに仕事だなんて……」
「まぁ、本人が望んでやってる仕事なんだしね……僕達がどうこう言える問題じゃないけど」
健太はそう言う。
「けど残念だったなぁ。マコちゃんの水着姿見られないなんて……」
「……って吉行。いつの間に来てたの?」
背後にいた吉行に対して、健太はそう反応を示す。
「というか今の発言、不謹慎ね」
「女の敵です」
「吉行君、今のはちょっと……」
「……」
女子四人から若干引かれる吉行。
「ちょ……待ってくれよ!俺から引かないでくれよ!!」
心の距離が遠くなったのを感じた吉行は、慌ててそれを縮めようとする。
だがその前に。
「……何やってるの、お兄ちゃん」
杏子に声をかけられた。
「「「「「……お兄ちゃん?」」」」」
一同が吉行に尋ねる。
すると。
「ああ、紹介するぜ。こいつは、俺の妹の、杏子だ」
「よろしくお願いします」
(ペコリ)
一同に向かって挨拶をする杏子。
「よ、吉行って……妹いたの?」
その事実に驚きを見せる健太。
「ああ、いたぜ……って言わなかったっけ?」
「高校に上がってからはともかく、中学の時にも聞いてないんだけど」
というか、同じ中学に通っていなかったのか?
健太の頭の中に、そのような疑問がわき出てくる。
「ちょっとした理由、というか、本人たっての希望で、中学は別だったんだよ。最も、俺の
方が無理矢理自分の家から遠い方を選んだんだけどな」
「へぇ……」
「あ……杏子、お兄ちゃんがいるとは聞いてたけど、この人だったんだ……苗字が同じだなぁ
とは思ってたけど」
小さく杏子に尋ねる美咲。
「うん。まさか知り合いだとは思ってなかったから……」
「……って美咲。もしかして、この子と知り合いなの?」
今の話の内容を聞いた健太が、美咲に尋ねる。
すると。
「うん。同じクラスの子だよ。転入してきた時にすぐに友達になったんだ」
「「「そうだったの!?」」」
吉行・健太・大貴の声が重なる。
「な、何が何だかついていけない……」
混乱するかなえ。
夏美も少し頭を抱えていた。
「と、とにかく。ここにいつまでもいるのもしょうがないから、プールに行こうよ」
「そ、そうだな」
健太の言葉に、大貴が頷く。
一同も同じ意見だったようで、それに賛同する。
と、ここで。
「あの、始めまして。いつも兄がお世話になってます」
「あ、こちらこそ……」
杏子に挨拶をされる健太。
「兄からいつも話は聞いています。優しい人なんですよね」
「え?そ、そうなのかな。そう言ってもらえると嬉しいかも」
笑顔でそう言う健太。
その時に、杏子の顔がほんのり赤くなったことを、他の人達は知らない。
「そ、それじゃあプールに行きましょう!遅れちゃいますよ」
「そうだね。行こうか、杏子ちゃん」
「え……杏子、ちゃん」
分かりやすく顔を赤くする杏子。
そのままその場に突っ立ってしまう。
その事に気付いたのか。
「お〜い二人共。早くしないとおいてくぞ〜」
という吉行の言葉が聞こえて来た。
「あ、待ってください〜みなさん〜!!」
「今行くって〜!!」
健太と杏子の二人は、慌てて吉行達の後を追う。
そして健太達は、目的地についた。