その93 遊園地で 7番目
『遊園地で』編もまもなく終わりになります。
多分、次回辺りで。
ゴーカートに乗り込んだ健太達は、レースの準備を始めていた。
このゴーカートは、10人が一気にレースを行うという方式である。
実は、普通に滑走するのみでなく、競争形式にすることも可能なのだ。
その際は、一位には景品が送られるという。
「景品って言ってもよ、多分人形だろ?」
『そのとおりでございます!』
「うわっ!いきなり何だ!?」
突如、アナウンスが聞こえてきて、和秀は驚いていた。
『私は、このスペースレーシングの係員である、THE スペースでございます!!』
「ネーミングセンス、ださっ」
真緒が厳しい判定を下す。
「それで、景品って結局、何なんですか?」
かなえが係員に尋ねる。
すると。
『景品は、このサマラ島遊園地のマスコットキャラクターこと、モテラス君人形だー!!』
「ここのマスコットキャラクターって、そういう名前だったんだ……」
美咲はそう呟いていた。
「私……欲しいかも」
真弓がそう呟くのを、健太は聞いていた。
「よしっ。僕が一位を取ったら、須永さん、だっけ……?にあげるよ!」
「本当ですか!?」
「うん」
真弓は、結構喜んでいた。
そんな姿を見て、面白くなさそうにしている人達が、約四名。
「「「「……」」」」
「私も人形欲しい!」
美咲がねだって来た。
「う〜ん……人形は一つしかもらえないんじゃないかな」
『そんなことありませんよ?人形は、一位の人が望めば、人数分差し上げることもできます』
「本当ですか!?」
なんて都合のいいシステムなのだろうと、健太はこの時思った。
「おい」
(ポン)
ふと、健太は肩を叩かれる感触がしたのに気づいた。
「何?えっと……小日向君」
「和秀でいいよ。それより健太!いきなり真弓ちゃんに茶々入れようってか?真弓ちゃんは
俺の何だよ!!」
いきなりの所有者宣言だった。
「ち、違いますよ!私は小日向君の所有物じゃありません!」
「そこでだ!!」
聞いちゃいない。
「俺と決闘しろ!!」
「……え?何でそういう展開に?」
ほとんどの人が、その展開についていってなかった。
「俺が勝ったら、俺が真弓ちゃんに人形をプレゼントする。お前が勝ったら、お前が
真弓ちゃんに人形をプレゼントする!!」
「……どっちにしろ、須永さんはプレゼントもらえるんだ」
健太は呟いていた。
『さぁさぁみなさん!位置についてください!!もうすぐ始まりますよ〜!!』
言われて、健太達はゴーカートに乗り込む。
1番から順に、健太・美咲・夏美・かなえ・マコ・和秀・和樹・真弓・真緒・美夢の順番だ。
『それでは参ります!レディー……GO!!』
(ブワァ〜ン!!)
合図と共に、一斉にスタートする。
しかし。
「あれ?あれ?」
一人混乱している人がいた。
美夢である。
『……それ、アクセルとブレーキ、逆ですね』
「あっ、本当……だー!!」
(ブワァ〜ン)
一気に加速をつけて、美夢が後に続く。
『……大丈夫なのだろうか。今回のレース』
係員はそんな心配をしていた。
レースも終盤に差し掛かり、ゴールが近づいてきた。
一位争いには健太と和樹、そして和秀の三人が。後続に、かなえ・夏美・マコ・真緒・美咲・
真弓と続き、最後尾には、やはり美夢がいた。
「ふぇ〜ん!もうみんなに追いつけないよ〜」
半ば泣きながら運転していた。
「負けるわけには……いかない!!」
和秀が、ここぞとばかりにスピードを上げる。
「くっ!やっぱりセンスあるね、健太」
「和樹だって!」
健太と和樹は、本当に楽しそうに運転していた。
「そろそろゴールだよ!!」
マコが叫ぶ。
「ラストスパートよ……せめて四位には入るわよ!!」
真緒がそう決意する。
「「「うおおおおおおおおおおおお!!!」」」
三人分の叫び声が聞こえる。
『さぁ!一位でゴールするのは果たして誰なのか!?まもなく一位の人がゴールします……お〜と!?なんと一位が三人も!?先にゴールするのは誰だ!!』
実況が聞こえる中、一位の人がゴールした。
次回は、かなりベタなあの乗り物で。
やはりこの二人が乗ります。