甘味のすゝめ
生徒と教師の恋、襟足4センチ。シリーズ更新しましたー!!!
まだまだ恋愛要素は無いのですが、ゆるくお付き合いいただければ嬉しいです……☺
ちなみに、私はダイエット、と胸を張って言える程ではないダイエットをしているので、ここ一年間、ドーナツとはご無沙汰してます………食べたい………
もし、自分の大好きな場所にいきなり、自分の嫌いな人が現れたらあなたはどんな気持ちになりますか?
不快でしょう?
自分の場所でもないのに、縄張り意識が芽生えて、なんでお前がここにいるんだ、って思うでしょ?
そう、今まさに私はそんな気持ち。
「なんで…立河先生がここにいらっしゃるんですか……?」
「んー?今日ちょっと残業になりそうだから、小腹埋めるものでも買っておこっかな〜〜って」
ニヒヒって笑いながら長財布を軽く振る先生。
電灯の光を受けて、ぼんやりと反射している黒い革財布。
「あーはい、そうなんですかー」
「棒読み酷くない?」
………どうにもこうにも好きになれない……。
一部の生徒から絶大な人気を誇るらしい、立河昌哉…先生。
確かに、見た目は整っている。キリッとした眉毛と、綺麗な二重を持つ大きな瞳。口角がキュッと上がって、ぷっくりとした血色の良い唇。
確かにこれは女子高生ウケしそうな外見だ。
そして、フレンドリー。ノリもよくって、男子からも慕われている。
そしてこいつは自分が人気のある教師、だということを薄々自覚しているようなのだ。
それが…………ムカツク。
でも自覚するな、って言う方が難しいことくらいわかってはいるんだけどね……。
ノリがいいけれど、その分相手をからかう様な喋り方をする嫌いがある。
これが本ッッッッッ当に不愉快。
あと、授業中生徒を当て、相手が答えを言うのに詰まっていると、先生はだらしなく伸ばした襟足を指でいじりながら回答を待っている。
困っていたらヒントをあげたりもするんだけど、襟足をいじる、っていう仕草が女っぽくって気持ち悪いというか、チャラいっていうか……なんだかムカツク。
なんでこいつがそんなにムカツクのか?と聞かれれば、ハッキリとした理由を言うことはできない。
よくわからないけれど、嫌い。
もしかしたら、本当は嫌いではないのかもしれない。
………うーん…よくわからない。とりあえず自分の中で「私は立河先生が嫌いだ」ということにしている。
それに、私は国語が得意ではないから、先生の授業はよく寝ている。
だから、話すのがなんだか気まずい。そうしてこんな愛想のない話し方しかできない。
「…何食べようかなぁ………?」
ショーケースを真剣な目で見つめる立河。
私はそのまつげをじっと見ながら呟く。
「チョコファッション、美味しいですよ」
「え」
なんてアホみたいな顔をしているんだろ、こいつ。
彼の黒いまつげが2回瞬く。
てか!!何言ってるんだろ私……自分から話しかけるとか………え……?
自分でも驚いた。
私疲れているのか………????
「そうか!!じゃあ俺これ食べようかな!!」
そうして菜乃お姉ちゃんが持っている黄色いトレーには、チョコファッションとフレンチクルーラーが乗せられた。
フレンチクルーラーとか女子かよ、って眉根を寄せて心の中でツッコミを入れる。
紙袋を受け取ったとき、先生は最後にこう言った。
「木野さんがオススメ教えてくれるなんて、正直ビックリした…ありがとね!」
周りに光が飛んでいるように見えるスマイル(きっとこれが女子高生にはウケるのだろう)を浮かべ、店を出る先生。
私はぼおっとその後ろ姿を見ていた。
先生に声をかけたのはただの気まぐれ。
他意はない。
そう考えると、それでこの一件は収まる気はしたんだけど、どこか腑に落ちなくって。
「……で、さーちゃん何食べんのー????」
オレンジ色のトングをカチカチ鳴らす菜乃お姉ちゃんの声で我に返る。
何も考えていなかった……でもここでチョコファッション食べたら、やっぱり太っちゃうし……
「あー………ええっと……あ!!フレンチクルーラー1個ちょうだい!!」
別に他意などない。