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旦那様はずる休みをご所望です

 甘い雰囲気になったのに!

 どうして私はまた一人で広いベッドに寝ているの?!

 夕飯を二人で楽しく食べた所までは覚えてる。

 もう少し話をしようって言われて、食事の後も二人で紅茶を飲みながら座ってお話をした。したんだ、お話を…だけど私、いつベッドに入ったか覚えてない!まさか、寝てしまったの?私!

 確かに、慣れないお屋敷に来てずっと緊張してたし、畑仕事で疲れてたし、イライアス様が優しくて幸せでふわふわして、眠くなった気が…

 どうしよう、ご飯の用意の前に、イライアス様のお部屋に行く?でもお部屋、近付いたら駄目かも?

 ぐるぐる考えながら着替えて部屋を出て、廊下を行ったり来たり。


「奥様、旦那様のお部屋はこちらでございます。」


 出た!モールスリー!

 考え読まれたのかな?なんでイライアス様のお部屋に案内してくれるの?


「あ、あの、私…昨日…?」

「途中で眠ってしまわれましたので、旦那様がお部屋まで運ばれました。」

「き、着替え、は?」

「侍女がやりました。」


 そ、そか。良かった。


「怒ってました?」

「…ご自分でお確かめ下さいませ。」


 意地悪!

 怒ってたら潔く謝ろうって決めて、モールスリーに付いて行く。辿り着いた部屋の扉を叩くと、聞こえたのは眠そうで不機嫌な声。やっぱり、少し怖い…。


「か、カトリオーナです。」

「…………どうぞ。」


 なんの間だろう?顔も見たくないとか?それとも、運んで重かったとか?

 びくびくしながら部屋を覗いたら、ベッドの上に不機嫌な美人がいた。長い茶色の髪は背中を覆うように散ってて、綺麗。ベッドの上に座って片膝立てて、膝に頬を付けて、彼は私を睨んでる。


「……体半分じゃなくて、入ったら?」

「お、おはよう。昨日、ごめんね?寝ちゃって…」


 そろりと中に入ったら、モールスリーに扉を閉められて逃げ道を塞がれた。殿方と令嬢を一部屋に閉じ込めるなんて!って思ったけど、私達夫婦でした。


「おいで、カトリオーナ。」

「は、はい。……怒ってる?怒ってるよね?重かったよね?運ばせてごめんなさい!」

「いいから、おいで。」


 不機嫌に手招きされて、私は渋々近付く。好きな人がいるベッドって、近付くの、緊張するよぅ。


「頬の傷は?」

「もう痛くないよ。」

「薬、作ったんだ。座って。」

「自分で出来るよ?」

「座って。」


 ぽんぽんってベッドの端を示されて、座る。元々目付きが鋭い人だから、不機嫌だと怖いんだよぅ。

 大人しく座ったら、イライアス様が薬を塗ってくれる。傷跡残らないようにだって。やっぱり優しい人。


「ねぇ、今日、仕事休んだら一緒にいてくれる?」

「?具合悪い?大丈夫?」


 熱でも出たのかなって思って額に触れてみる。でも、熱くはない。むしろ私の方が熱いくらい。


「そういえば、ライオネルが熱出した時王妃が一日付きっきりで看病してたんだよね。私が熱を出したら、カトリオーナは看病してくれる?」

「するよ。栄養のあるご飯も作ってあげる。やっぱり具合悪いの?」

「一緒に寝よう。」

「え?」


 驚いている間に視界が反転して、布団の中に引きずり込まれてた。


「初夜、やり直し、効く?」

「い、いいい今は朝!」

「朝だっていいさ。」

「良くないよ!ご飯!ご飯作るから!」

「君のご飯も良いけど、君を食べたい。」

「朝は嫌!!」

「どうして?」

「あ、明るいの…いや…」

「まずい。可愛いな。」


 覆い被さって来たイライアス様の唇に、口を塞がれた。そのままするりと生き物みたいな舌が滑り込んで来て、優しく頬の裏や歯列を撫でられ、私の舌が絡め取られる。そこから体が甘く痺れて来ちゃって、力が入らなくなる。


「初めから、全部、やり直しても良い?」

「……初めは、何処から?」

「出掛けるのは好き?王都、初めてだろう?」

「好き!初めて!でも、お仕事…」

「優秀なのが二人いるから大丈夫。ライオネルだって、許してくれる。」

「そうなの?」

「そうなの。」


 ちゅって、音を立ててキスされて、体を起こされる。ぎゅうって抱き締められて、なんだか幸せ。


「朝食はメリルが用意してくれるよ。だからもう少し、このままでいよう?」

「うん。イライアス様、好きです。」

「そう言われて嬉しいの、初めてだな。」


 とろりとした可愛い笑顔。彼の笑顔は、やっぱり可愛い。八つも年上の男の人を可愛いなんて思ったら、失礼かな?

 優しく包まれる腕の中。悩んでた私の耳に窓を叩く音が届いた。聞き覚えがある、小さな固い音。


「あ!ロトだ!」


 振り向いた窓辺には見覚えのある鷹がいた。イライアス様を見上げると、苦笑してる。

 私を腕に閉じ込めたままでベッドから降りて、一緒に窓辺に向かう。こんな幸せでドキドキする移動方法、初めて。


「ありがとう、ロト。」


 ロトの足から手紙を取って、イライアス様はさっと目を通す。溜息を吐いて、ロトに話し掛ける。


「シルヴィア様に伝えて。有難く休ませてもらうって。」


 ロトは一声鳴いて飛んで行っちゃった。


「お手紙で返事しなくて良いの?」

「大丈夫。もしかしたらこれも聞こえてるかも。」

「どういう事?」

「変な人なんだよ。それより、ライオネルとシルヴィア様が二人揃って休んで良いって。許可もらったよ。」

「昨日から申請してたの?」

「いや。今朝思い付いた。」


 よく、わからない…


「その内、会えばわかるよ。でも今日は、私に君を独り占めさせて?」

「うん!」


 初めてのイライアス様とのお出掛け。

 すっごく楽しみ!

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